救急外来における秋冬シーズンのRSウイルス感染症


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成人でRSウイルスによる感染症をほとんど診断することはありません。これは診断の保険適用が1歳未満に限定されているためであり、マルチプレックスPCRで同時に測定しちゃいました、という医療機関でない限りは、そもそも診断しにいきません。

ただ、COPD患者や高齢者において、RSウイルスは一定の重症化リスクを持つ呼吸器感染症であることから、ワクチン接種が期待されています。一足先に承認となったのがGSK社のアレックスビー(遺伝子組換えRSウイルスPreF3抗原(RSV PreF3)・アジュバントシステム(AS01E)で構成されるサブユニットワクチン)です。中和抗体に加えてRSV PreF3特異的CD4陽性T細胞応答を誘導します。



Santus P, et al. Respiratory syncytial virus burden and risk factors for severe disease in patients presenting to the emergency department with flu-like symptoms or acute respiratory failure. Respir Med. 2023 Nov:218:107404.

  • 概要
■RSウイルス感染の予測因子や、これによる不良転帰の決定因子はまだ不明である。われわれはRSVの感染負荷を評価し、RSV陽性スワブおよびRSV重症化に関連するリスク因子を検討した。

■2022-2023年の秋冬シーズンに、インフルエンザ様症状または急性呼吸不全でミラノのL. Sacco大学病院救急部門に紹介され、SARS-CoV-2、RSウイルス、インフルエンザウイルスA型のプロトコル検査を受けた連続した全患者を対象とした後ろ向き単施設コホート研究である。臨床的特徴および患者アウトカムが登録された。呼吸不全、呼吸補助必要性、ショック、敗血症、院内死亡を重症と定義した。

■解析対象は717例(スワブ陰性65.1%、インフルエンザA型14.1%、RSウイルス8.5%、SARS-CoV-2 8.6%、その他3.6%)だった。研究コホートと比較して、RSウイルス患者は急性呼吸不全(62.7%)および重症(70.5%)の発生率が最も高く、死亡率はインフルエンザA型と同程度であった(6.6% vs 5.9%、p=0.874)。RSウイルス患者はインフルエンザA型患者と比較して、年齢が高く(p = 0.009)、Charlson indexが高く(p = 0.001)、慢性心不全の頻度が高く(p = 0.001)、ICS(p = 0.026)および免疫抑制剤(p = 0.018)を使用頻度が高かった。

■慢性心不全[オッズ比(95%信頼区間):3.286(1.031-10.835);p=0.041]、ICSへの慢性曝露[オッズ比(95%信頼区間):2.377(1.254-4.505);p=0.008]、免疫抑制剤[オッズ比(95%信頼区間):3.661(1.246-10.754);p=0.018]は、RSウイルス感染を予測する因子であった。血糖値≧120mg/dL[オッズ比(95%信頼区間):5.839(1.155-29.519);p=0.033]、白血球≧8000/μL[オッズ比(95%信頼区間):5.929(1.090-32.268);p=0.039]、過去/活動的喫煙[オッズ比(95%信頼区間):7.347(1.301-41.500);p=0.024]は、重症RSウイルス感染症を予測する因子であった。






by otowelt | 2023-11-07 00:56 | 感染症全般

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


by 倉原優
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