STARR2試験:末梢血好酸球数に基づくプレドニゾロン戦略
2024年 01月 05日
GOLD 2024では、増悪時に「プレドニゾロン40mg×5日間」のレジメンが推奨されています(長らくこのレジメンが推奨)。プレドニゾロンの有効性を規定する因子として好酸球数があるのは理解できるのですが、COPD増悪において好酸球が影響しているとは思われない喘鳴もある点が実臨床の難しいところです。
個人的には、2021年に報告された「個別化プレドニゾロン」(Chest. 2021 Nov;160(5):1660-9.)のほうが使い勝手がよいかなあと感じています。
Ramakrishnan S, et al. Blood eosinophil-guided oral prednisolone for COPD exacerbations in primary care in the UK (STARR2): a non-inferiority, multicentre, double-blind, placebo-controlled, randomised controlled trial. Lancet Respir Med. 2023 Nov 1:S2213-2600(23)00298-9.
■COPD増悪時には全身性ステロイドの使用が推奨されているが、使用による有害性の増加も懸念される。われわれは、COPD増悪時に、好酸球バイオマーカーを指標とした経口プレドニゾロン療法を行うことが、有害転帰に影響を及ぼすことなくプレドニゾロン減量に有効という仮説を立てた。
■STARR2試験は、イギリスの14のプライマリケアクリニックで実施された多施設共同ランダム化二重盲検プラセボ対照試験である。対象は現在または過去の喫煙者(喫煙歴が少なくとも10pack-years以上)でCOPDと診断され、気管支拡張後1秒率70%未満と定義され、過去12か月間に少なくとも1回の増悪歴があり、抗菌薬の併用または非併用で全身性ステロイドを必要とした40歳以上成人を登録した。
■すべての医療従事者および参加者は、試験群の割り付け・治療割り付けについて盲検化された。参加者は、血中好酸球に基づく治療群(BET;好酸球数が高値[≧2%]の場合は経口プレドニゾロン30mgを1日1回投与、好酸球数が低値[<2%]の場合はプラセボ投与)と標準治療群(ST;point-of-careでの好酸球数にかかわらずプレドニゾロン30mgを1日1回投与)にランダムに割り付けられた(1:1)。
■治療期間は14日間とし、全例に抗菌薬も投与した。主要アウトカムは、治療失敗率(抗菌薬またはステロイドによる再治療の必要性、何らかの原因による入院、死亡と定義)とし、修正ITT集団において増悪後30日目に評価した。参加者はさらなる増悪時に再ランダム化の対象となった(参加者1人あたり最大4回の増悪)。ランダムに割り付けられた参加者全員について安全性解析が行われた。優越性試験としてデザインされたが、データロックの前にランダム化コードに誤りがあることが判明し、試験は非劣性を示すように変更された。95%信頼区間の上限マージン1.105が非劣性マージンと定義された。
■2017年11月6日から2020年4月30日の間に、14のクリニックから308人の参加者を募集した。参加者93例(平均年齢70歳[範囲46~84]、平均%予測FEV1 60.9±19.4%;男性52例[56%]、女性41例[44%])から144例の増悪(BET群73例、ST群71例)が修正ITT解析に組み入れられた。増悪後30日の治療失敗はBET群で14例(19%)、ST群で23例(32%)であった。COPD増悪後の治療失敗の減少において、BET群とST群の間に有意ではないものの大きめの推定効果(RR 0.60[95%信頼区間0.33-1.04];p=0.070)が認められた。非劣性解析では、BETはSTに対して非劣性であることが支持された。
■有害事象の発生頻度は両群間で同様であり、糖尿病(BET群2/102[2%]、ST群1/101[1%])、COPD増悪による入院(BET群2/102[2%]、ST群1/101[1%])が両群で最も多く発生した2つの有害事象であった。死亡例はなかった。
by otowelt
| 2024-01-05 00:11
| 気管支喘息・COPD