集中治療室のせん妄に対するミノサイクリン
2023年 12月 08日
非定型肺炎で重症例の場合、「よっしゃミノサイクリン使おか」という感じになるでしょうか。せん妄の確定治療として投与するのはいろいろ勇気がいりますね。
Dal-Pizzol F, et al. Prophylactic minocycline for delirium in critically ill patients: a randomized controlled trial. Chest. 2023 Dec 1:S0012-3692(23)05833-6.
- 概要
■ミノサイクリンは神経疾患の動物モデルにおいて神経保護作用を示すが、ヒトでの研究データは少ない。ミノサイクリンの神経保護作用は重症患者におけるせん妄の発生を予防するかどうか調べた。
■4つのICUで行われたランダム化プラセボ対照二重盲検試験である。18歳以上の患者を対象とし、ミノサイクリン(100mg、1日2回)またはプラセボを投与する群にランダムに割り付けた。主要アウトカムは28日以内またはICU退院前のせん妄発生率であった。副次アウトカムは、ICU滞在中のせん妄発生日数、せん妄のない日数、人工呼吸器装着期間、ICU滞在期間、ICU死亡率、病院死亡率であった。探索的アウトカムとして、さまざまな炎症性バイオマーカー(IL-1β、IL-6、IL-10、CRP)および脳関連バイオマーカー(BDNF、S-100B)の動態をみた。
■合計160例の患者がランダムに割り付けられたが、プラセボ群の1例が治療前に死亡したため、159例が解析対象となった(ミノサイクリン:n=84、プラセボ:n=75)。COVID-19の流行後、患者の組み入れを早期に中止することが決定された。せん妄の発生率はわずかであったが、ミノサイクリン群で有意に減少した(ミノサイクリン群17例[20%]、プラセボ群26例[35%]、P=0.043)。その他のせん妄関連のアウトカムにミノサイクリン治療による変化はみられなかった。また予期されていなかったことだが、ミノサイクリン群において院内死亡率が有意に減少した(39% vs 23%、P=0.029)。解析されたすべてのバイオマーカーの中で、血清CRP値のみがミノサイクリン治療後に有意に減少した。
by otowelt
| 2023-12-08 00:38
| 集中治療