肺M. abscessus症に対するリネゾリド

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リネゾリドは、副作用リスクを背負うかわりに治療効果が出るのがスピーディというメリットはありそうです。強化治療フェーズで入れる意義はあるかもしれませんが、長くて安全に使用できたほうがよいかも・・・とも思います。

リネゾリド以外のオキサゾリジノンが出ているので、もう少しリネゾリド以外のエビデンスが欲しいところですね。上海ではイミペネムよりも圧倒的にセフォキシチンの使用が多く、日本とはβラクタムのレジメンが異なる点には注意が必要です。





  • 概要
■この研究は、肺M. abscessus(MABS症)治療におけるリネゾリド含有レジメンの有効性と安全性を評価することを目的とした。2018年1月から2020年12月までに上海呼吸器センターに入院した肺MABS症336例の記録を後ろ向きに解析した。

・初期強化期間:
 以下の薬剤のうち少なくとも3種類を使用: アミカシン(静注、10~15mg/kg/日)、クラリスロマイシン(経口、1000mg/日)またはアジスロマイシン(経口、500mg/日)、イミペネム(静注、2000mg/日)またはセフォキシチン(静注、 6~12g/日)、リネゾリド(経口、600mg/日)、ドキシサイクリン(経口、200mg/日)、クロファジミン(経口、100mg/日)、モキシフロキサシン(経口、400mg/日)。
・維持期間:
 以下の薬剤のうち少なくとも2種類を使用:アミカシン(400mg/日、ネブライザー)、クラリスロマイシンまたはアジスロマイシン(上記用量)、リネゾリド(上記用量)、ドキシサイクリン(上記用量)、クロファジミンおよびモキシフロキサシン(上記用量)

■合計164例がリネゾリド含有レジメンを受け、対照群172例は投与を受けなかった。有効性、安全性、抗菌薬感受性プロファイル、アウトカム、培養陰性化、空洞閉鎖、有害反応を2群で比較した。

■全体のマクロライド耐性率は53.8%だった。両群の治療成功率は同等で(56.1% vs 48.8%;P>0.05)、治療期間はリネゾリド群の方が短かった(16.0か月[IQR:15.0-17.0] vs 18.0か月[IQR:16.0-18.0];P<0.01)。喀痰培養陰性化率は同等だったが(53.7% vs 46.5%、P > 0.05)、陰性化までの期間はリネゾリド群の方が有意に短かった(3.5か月[IQR:2.5-4.4] vs 5.5か月[IQR:4.0-6.8]、P < 0.01)。リネゾリド群は空洞閉鎖率が高く(55.2% vs 28.6%、P<0.05)、閉鎖までの期間が短かった(3.5か月[IQR:2.5-4.4] vs 5.5か月[IQR:4.0-6.8]、P<0.01)。貧血および末梢神経障害はリネゾリド群で多かった(17.7% vs. 1.7%;P < 0.01;12.8% vs. 0.6%;P<0.01)。





by otowelt | 2023-12-09 06:14 | 抗酸菌感染症

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


by 倉原優
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