ACCESS試験:市中肺炎の標準治療に対するマクロライド併用

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割と衝撃的な論文です。割合で2倍の差がついています。

あらゆる市中肺炎のガイドラインにおいて、エンピリック治療にはマクロライドとβ-ラクタムの併用が推奨されています。これは、マクロライド併用による生存期間延長効果を報告した16の観察研究と5つのメタアナリシスの結果に基づいています。しかしながら、ランダム化比較試験による直接的な有益性はいまだ証明されていません。

また、早期臨床反応(early clinical response)については、EMAとFDAが導入した新しい主要評価項目で、治療開始から72時間後に評価するようになっています。これに即したエビデンスが求められていました。

肺NTM症の診療をしていると、クラリスロマイシンの濫用は避けたほうがよいのでは・・・と思ってしまうのですが、何はともあれ「市中肺炎に併用したほうがよい」というエビデンスは堅牢な状況のようです。



Giamarellos-Bourboulis EJ, et al. Clarithromycin for early anti-inflammatory responses in community-acquired pneumonia in Greece (ACCESS): a randomised, double-blind, placebo-controlled trial. Lancet Respir Med. 2024 Jan 3:S2213-2600(23)00412-5.

  • 概要
■市中肺炎の入院患者に対するβ-ラクタム系抗菌薬へのマクロライド系抗菌薬の追加は、ランダム化比較試験ではなく、観察研究やメタアナリシスの結果に基づいている。われわれは、このような集団において、β-ラクタム系抗生物質による治療にマクロライド系抗生物質であるクラリスロマイシンを追加することで、市中肺炎の新エンドポイントである早期臨床反応(early clinical response)が改善するかどうかを検討した。

■ACCESS試験は、ギリシャで実施された第3相前向き二重盲検ランダム化比較試験であり、SIRS、SOFAスコア2点以上、プロカルシトニン0.25ng/mL以上を有する市中肺炎の入院成人患者が登録された。患者は、標準治療薬(第3世代セファロスポリンの静脈内投与またはβ-ラクタム薬+β-ラクタマーゼ阻害薬の静脈内投与を含む)+経口プラセボあるいは経口クラリスロマイシン500mg1日2回を7日間投与する群に、ランダム化された。主要複合エンドポイントは、72時間後(すなわち治療開始4日目)に患者が以下の条件を両方満たすことを必要とした。

①早期臨床反応の指標として呼吸器症状の重症度スコアが50%以上低下していること
②早期炎症反応の指標としてSOFAスコアが30%以上低下していること、またはプロカルシトニンの動態が良好であること(ベースラインから80%以上低下または0.25ng/mL未満と定義)、あるいはその両方

■278人が2021年1月25日~2023年4月11日に登録され、クラリスロマイシン群(n=139)、プラセボ群(n=139)にランダム化された。解析には、クラリスロマイシン群134例(同意撤回5例)、プラセボ群133例(同意撤回6例)が組み入れられた。

■主要複合エンドポイントはクラリスロマイシン群91例(68%)、プラセボ群51例(38%)で達成された(差29.6%[95%信頼区間17.7-40.3];オッズ比3.40[95%信頼区間2.06-5.63];p<0.0001)。

■重篤な治療上緊急の有害事象(TEAE)は、クラリスロマイシン群で58例(43%)、プラセボ群で70例(53%)に発現した(差9.4%[95%信頼区間-2.6~20.9];オッズ比:0.67[95%CI:0.42-1.11])。重篤なTEAEはいずれも治療割り付けに関連していないと判断された。






by otowelt | 2024-01-09 00:33 | 感染症全般

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


by 倉原優
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