ニューモシスチス肺炎の死亡リスク因子

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PCPのリスク因子についての論文です。すでにベースラインでステロイドが入っている人のプレドニゾロンの用量っていつも迷いますよね。当院は月に1件くらいのPCPが入院しています。




Lécuyer R, et al. Characteristics and prognosis factors of Pneumocystis jirovecii pneumonia according to underlying disease: a retrospective multicentre study. Chest. 2024 Jan 10:S0012-3692(24)00022-9.

  • 概要
■ニューモシスチス肺炎(PCP)は依然として死亡率の高い疾患であり、免疫不全がPcPの臨床症状、重症度、死亡率に及ぼす影響は十分に評価されていない。この研究では、PCPの原因となる基礎疾患や免疫抑制が臨床像やアウトカムに影響を及ぼすかどうか調べた。

■2011年1月から2021年12月までに実施された多施設共同後ろ向き観察研究では、The European Organization for Research and Treatment of Cancer(EORTC)のコンセンサス定義に従ってPCPと確定診断、またはprobable PCPと診断された連続入院患者をすべて対象とし、全死亡率および90日死亡率に対する基礎疾患や免疫抑制の影響を評価した。

■合計481人の患者が本試験に組み入れられ、180人(37.4%)がPCPと証明され、301人(62.6%)がprobable PCPと診断された。免疫介在性炎症性疾患(IMID)または固形腫瘍を有する患者は、90日時点で他のPCP患者よりも統計学的に予後が不良であった。

■多変量解析では、HIV陰性の集団において、基礎疾患として固形腫瘍(オッズ比5.47,95%信頼区間2.16-14.1; p<0.001)、IMID(オッズ比2.19, 95%信頼区間1.05-4.60; p=0.037)、長期のステロイド曝露(オッズ比2. 07、95%信頼区間1.03-4.31、p=0.045)、喀痰/BAL塗抹標本中の嚢子(オッズ比1.92、95%信頼区間1.02-3.62、p=0.043)、入院時SOFAスコア(オッズ比1.58、95%信頼区間1.39-1.82、p<0.001)が90日死亡率と独立して関連していた。ステロイド治療は90日死亡率と関連する唯一の免疫抑制剤で(オッズ比1.67、95%信頼区間1.03-2.71、p=0.035)、特にプレドニゾロン10mg/日以上(オッズ比1.80、95%信頼区間1.14-2.85、p=0.010)がリスクであった。





by otowelt | 2024-02-07 00:54 | 感染症全般

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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