PACIFY COUGH試験:IPFの咳嗽に対する塩酸モルヒネ


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IPFの咳嗽の多くは乾性咳嗽なので、オピオイドは有効だろうと思います。一定の効果はみられており、日中の咳嗽にいたっては半減しております。保険適応については心配ありません、もともと難治性の咳に対して適応を有しています。




■IPFは進行性の線維性肺疾患であり、多くの患者が咳を有している。現在において証明された治療法はない。われわれは、IPF症の患者を対象に、鎮咳療法として低用量徐放性モルヒネの使用をプラセボと比較して検討した。

■このPACIFY COUGH試験は、イギリスにおける3つの専門施設で行われた第2相多施設共同ランダム化二重盲検プラセボ対照クロスオーバー試験である。5年以内にIPFと診断された40~90歳の患者で、自己申告による8週間以上の咳嗽があり、咳嗽VASが30mm以上ある者を対象とした。

■患者はプラセボ1日2回投与群またはモルヒネ徐放製剤5mg1日2回経口投与群に14日間ランダムに割り付けられ(1:1)、7日間のウォッシュアウト期間の後、クロスオーバーされた。患者、治験責任医師、看護師、薬剤担当者は治療割り付けをマスクされた。

■主要エンドポイントは、ランダム化されたすべての参加者を含むITT集団における、治療開始14日目に客観的デジタル咳嗽モニタリングにより評価されたベースラインからの客観的覚醒時咳嗽頻度(1時間あたりの咳嗽)の変化率である。安全性データは、少なくとも1つの試験薬を服用し、同意を撤回しなかった全患者が含まれた。

■2020年12月17日から2023年3月21日の間に、47人の参加者がスクリーニングされ、44人が登録されランダム化された。平均年齢は71±7.4歳、44人中31人(70%)が男性、13人(30%)が女性だった。肺機能は中等度に障害されており、平均FVCは2.7±0.76L、平均予測%FVCは82±17.3%、平均予測%DLcoは48±10.9%だった。

■44人の患者のうち、43人がモルヒネ治療を完了し、41人がプラセボ治療を完了した。ITT解析において、モルヒネはプラセボと比較して客観的覚醒時咳嗽頻度を39.4%減少させた(95%信頼区間-54.4 to -19.4;p=0.0005)。日中の平均咳嗽回数は、モルヒネ治療によってベースライン時の21.6(SE 1.2)回/hから12.8(1.2)回/hに減少したが、プラセボでは咳嗽回数は変化しなかった(21.5[SE 1.2]回/hから20.6[1.2]回/h)。

■治療アドヒアランスはモルヒネ群で98%、プラセボ群で98%であった。有害事象はモルヒネ群43人中17人(40%)、プラセボ群42人中6人(14%)に認められた。モルヒネの主な副作用は吐き気(43人中6人[14%])と便秘(43人中9人[21%])であった。プラセボ群で1件の重篤な有害事象(死亡)が発生した。





by otowelt | 2024-01-18 12:07 | びまん性肺疾患

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


by 倉原優
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