夏型過敏性肺炎における温暖・湿潤日数が抗Trichosporon asahii抗体陽性に与える影響

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この研究を思いついたのもすごいですし、ここまで調べたのもすごいと思います。検査提出数は夏に多いのに、陽性数と陽性率が1~2か月後ずれする現象は興味深いです。




Endo S, et al. Effect of warm and humid days on the positivity. Respir Investig. 2024 Jan;62(1):150-156.


  • 概要
■夏型過敏性肺炎(SHP)は、日本では温暖で湿度の高い夏季に発症することが報告されているが、気象条件がSHPに及ぼす影響は不明である。抗Trichosporon asahii抗体(TaAb)検査は特異性が高く、SHPの診断に有用である。そこで我々は、TaAb陽性率と温暖・湿潤日の関係を検討することにより、気象条件がSHPに及ぼす影響を調べた。

■2013年6月から2020年6月までのTaAb検査データを大手民間検査機関(BML・SRL)から入手し、都道府県別の検体数とTaAb陽性率を明らかにした(カットオフ値0.3)。気象庁のデータベースを用いて、各都道府県の温暖・湿潤日(最高気温25℃以上・平均湿度80%以上)をカウントした。負の二項回帰を用いて、TaAb陽性率と月間の温暖・湿潤日数との関係を検討した。

■総検体数は79,211検体、陽性検体数は7626検体(9.6%)であった。最も多い年齢層は70歳代(34.1%)であった。2013年6月の全国検体数は328検体であったが、徐々に増加し、2020年6月には1378検体となった。検体数は夏場に増加し、毎年7~8月にピークを迎えた。しかし、陽性検体数と陽性率は毎年9月か10月にピークを迎えた。平均陽性率は日本の南西部、特に太平洋側に面した近畿、四国、九州地方で高かった。

■ほとんどの地域で温暖・湿潤日数が増加した月の1~2ヵ月後に陽性率が増加する傾向がみられた。解析の結果、TaAb検査の1~2か月前の温暖・湿潤日数が、検査の陽性率と関連していることがわかった。検査1か月前と2か月前の温暖・湿潤日がそれぞれ1日増えるごとに、陽性率は1.6%と2.9%増加した。たとえば、検査1か月前と2か月前に、それぞれ暖かく湿度の高い日が5日増えると、陽性率が8.3%と15.6%増加した。

■関東、四国、南九州地方では、検査1か月前の温暖・湿潤日数のTaAb陽性率への影響は少なかった。一方、東北地方では、検査1か月前の温暖湿潤日数がTaAb陽性率に及ぼす影響は有意に大きく、検査2か月前の温暖・湿潤日数はTaAb陽性率に及ぼす影響は比較的小さかった。






by otowelt | 2024-01-22 02:28 | びまん性肺疾患

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


by 倉原優
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