誤嚥性肺炎に対する嫌気性菌カバー拡大は必要か?

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誤嚥性肺炎って結構診断難しくて、確かにS6とかS10に陰影があるとそれっぽいとは言われますが。市中肺炎でもS6、S10に陰影を起こすことはあるわけで。診断には、言語聴覚士の意見がとても大事だと思います。当院では嚥下造影もさかんです。

  • 概要
■嫌気性菌カバーが広い抗菌薬は、誤嚥性肺炎の治療によく使用されているが、現行ガイドラインで推奨されているわけではない。

■市中発症の誤嚥性肺炎で入院した患者において、嫌気性菌カバーが限定された抗菌薬 (LAC) と嫌気性菌カバーが拡張された抗菌薬 (EAC) との間に、院内死亡率とC. difficile感染症(CDI)のリスクに差があるかどうかを見た。

■2015年1月1日から2022年1月1日まで、カナダのオンタリオ州にある18病院を対象に、多施設共同後ろ向きコホート研究を実施した。医師が患者を誤嚥性肺炎と診断し、ガイドラインに準拠した第一選択の市中肺炎を処方した患者が対象となった。入院後48時間以内の非経口抗菌薬が投与された。セフトリアキソン、セフォタキシム、レボフロキサシンを投与された患者は、LAC グループに分類された。アモキシシリン・クラブラン酸、モキシフロキサシン、またはLACいずれか+クリンダマイシンあるいはメトロニダゾールと組み合わせて投与された患者は、EACグループに分類された。主要評価項目は、病院での全死因死亡率である。副次評価項目には、入院後に発生したCDIが含まれた。傾向スコアの重複重み付けを使用して、ベースラインの予後因子のバランスをとった。

■LAC 群と EAC 群の患者数はそれぞれ 2,683例と1,316例だった。 病院では、LAC群とEAC群の患者814人(30.3%)と422人(32.1%)がそれぞれ死亡した。CDIは、LAC 群5 人以下 (0.2% 以下) 、EAC群11 ~ 15 人 (0.8% ~ 1.1%) で発生した。傾向スコアの重複重み付け後、EAC から LAC を差し引いた調整後のリスク差は、院内死亡率1.6% (95%信頼区間-1.7% ~ 4.9%)、CDI1.0% (95%信頼区間0.3% ~ 1.7%)だった。

■以上のことから、嫌気性菌カバーの狭拡によって死亡率の増加に変化はないものの、カバーを広げることでCDIのリスクが増加することから、誤嚥性肺炎ではおそらく嫌気性菌カバーを拡張する必要はないと考えられる。





by otowelt | 2024-02-24 00:41 | 感染症全般

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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