日本における肺Mycobacterium abscessus症の疫学

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比較的近年の研究を集めたメタ解析結果です。この研究における約3%というのは森本先生らの2017年の研究(Ann Am Thorac Soc 2017;14:49–56)と、井手先生らの2015年の研究(PLoS One 2015;10:e0128304.12.)が主たる解析要因となっており、現在は東南アジア諸国のように少し増えている可能性はあります。あるいは、当院に紹介される症例が増えているだけでしょうか?施設バイアスがかかるので、俯瞰的な目が欲しいところです。

MACの既往があるMABS症例はよくみますが、”同時治療必要例”は個人的にはそこまで経験は多くないです。感度が高い検査を適用すると、MACが主なのにMABS治療を強化してしまうピットフォールがあったり(逆も然り)、副作用を増加させるリスクがあるので、細菌検査のスタッフと直接やりとりすることが大事だと思います。いずれにしてもMIC法には限界がありますが。

MACとMABSを同時に治療する必要がある場合、チエナム+アミカシン(導入:点滴、維持:アリケイス)+アジスロマイシン+ランプレン+エタンブトールで導入する感じになると思いますが、同時感染の治療はシーソーゲームのように選択圧がかかって耐性化しうるのでなかなか難しいと思われます。

MABS症の治療は日本結核・非結核性抗酸菌症学会の2023年の見解に書かれているので、ある程度標準化できることが当面の目標と思います。





  • 概要
Mycobacterium abscessus species(MABS)は、現在最も病原性の高い迅速発育菌(RGM)であり、本邦を含め世界的に急増している。われわれは、日本人における肺MABS症の日本における報告を収集した。

■日本における臨床呼吸器検体からの非結核性抗酸菌(NTM)またはMABSの分離を扱った研究を対象とした。26の論文のうち 6報が疫学調査、6報が微生物学的研究、7報がケースシリーズ、7報が後ろ向きコホート研究であった。

■NTMに対するMABSの比率は3.04%(95%信頼区間2.51-3.68)であった。メタ解析(single proportion)によると、MABSに感染した患者の推定平均年齢は67.72歳(95%信頼区間65.41-70.02)であった。亜種は、abscessusが52.16% (95%信頼区間43.89–60.32)、massilienseが47.12% (95%信頼区間39.70–54.67)であった。

■女性の割合は66.75%(95%CI:59.23-73.50)、非喫煙者の割合は67.57%(95%信頼区間62.43-72.32)、Mycobacterium avium complex(MAC)との同時感染の割合は36.74%(95%信頼区間25.30-49.90)であった。

■日本におけるMABSの特徴は、年齢、性別、合併症の観点から欧米とかなり異なっていた。欧米では患者が若く、女性が少なく、嚢胞性線維症(CF)を含む遺伝性疾患の発生が多い傾向がみられた。

■日本におけるMABSの性別と年齢の分布は、日本人のMACの分布と類似しているかもしれない。






by otowelt | 2024-03-08 00:26 | 抗酸菌感染症

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


by 倉原優
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