長期火災の被災地域におけるFeNO変化

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山火事などで長期間汚染された空気を吸い続けた人のFeNOが、その後上昇するかどうかをみたオーストラリアの研究です。

The Hazelwood open cut mine fire(ヘイゼルウッド炭鉱火災)は、2014年2月9日に発生しました。近くの草地火災が原因だそうです。火災により大量の煙と粉塵が、隣接する町モーウェルに降り注ぎました。モーウェルの多くの学校や保育所は閉鎖され、転校を余儀なくされた学生もいたそうです。





  • 概要
■気候変動により火災の頻度と激しさが増しているにもかかわらず、自然火災の呼吸器系の健康への影響に関する長期研究はほとんどない。われわれは、炭鉱火災におけるPM2.5への曝露と7.5年後のFeNOの関連性を調査した。

■2014年のヘイゼルウッド炭鉱火災に6週間以上曝露したモーウェルの成人居住者(215名)と、曝露していないセールの居住者(111名)が、FeNO測定に参加した。炭鉱火災のPM2.5の個々の曝露をモデル化し、時間・居住場所も記録された。PM2.5への曝露が呼気中のlog FeNOに与える影響は、サンプル全体で多変量線形回帰モデルを使用して調査された。

■326人の成人 (平均年齢: 57 歳) のFeNOを測定しました。FeNO中央値は17.5 ppb で、炭鉱火災PM2.5への1日曝露量は1人あたり7.2µg/m3であった。一般成人サンプルにおいても、潜在的に脆弱性のあるサブグループでも、炭鉱火災におけるPM2.5曝露とFeNOの関連性にエビデンスはなかった。

■重回帰分析の結果、成人全体でも、高齢者、男性、肥満、喫煙者、社会的弱者、呼吸器症状のある人、アトピー性疾患のある人、呼吸器疾患のある人などの潜在的な脆弱なサブグループでも、石炭鉱山火災のPM2.5曝露量とFeNOレベルとの間に有意な関連は認められなかった。点推定値は、サンプル全体とサブグループ全体で一貫してゼロに近かった。

■FeNOと中期の呼吸器系健康アウトカムに短期的な影響があったにもかかわらず、ヘイゼルウッド炭鉱火災によるPM2.5がFeNOに長期的影響をおよぼすというエビデンスは示されなかった。





by otowelt | 2024-06-18 00:59 | 呼吸器その他

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


by 倉原優
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