気管支鏡におけるリドカイン梨状窩散布注入
2024年 07月 19日
気管支鏡におけるリドカイン関連の比較試験は、処置中の噴霧に関するものがほとんどで、近年は「どのように快適に処置を完遂するか」という鎮静が論点となっています。しかしながら、気道に入る前のリドカインも重要です。当院ではスプレーを使って咽頭喉頭に噴霧していますが、これが本当に必要かどうかは質の良い研究がありません。今回検討されたのは、両側梨状窩へのリドカイン散布注入です。声帯に噴霧するのは一般的ですが、声帯をまたぎつつ左右の梨状窩に撒くというのが最適なのかもしれませんね。
- 概要
■処置後の咳嗽は、気管支鏡検査後でよく見られる合併症である。本研究の目的は、咳嗽の発生率を減らすためのリドカインによる梨状窩注入の安全性プロファイルと有効性を判断することである。リドカインの梨状窩注入は、抜管後10分の咳嗽の発生率をどの程度減らすことができるか調べた。
■連続88例の患者を、梨状窩への2%リドカイン2mL注入を受けるリドカイン群と、生理食塩水 2mLを用いた生食群にランダムに割り付けた。
■プロトコルとしては、フェイスマスクを用いて100%酸素によるpreoxygenationを行い、プロポフォール、スフェンタニル、ロクロニウムを用いて全身麻酔を導入した。気管支鏡を使って2%リドカイン2mLまたは生理食塩水2mLのいずれかの梨状窩両側に散布注入した。介入は同じ診療科の経験豊富な内視鏡医が行った。麻酔はプロポフォールとロクロニウムで維持した。
■主要評価項目は抜管後の咳嗽発生率であり、副次評価項目は数値評価スケールで評価した抜管後10分および6時間の咽頭痛スコア、VASで評価した抜管後10分および6時間の咳嗽重症度、24時間の40項目の回復の質スコア(QoR-40)、VASで評価した被験者の満足度スコアである。
■生食群と比較して、リドカイン群の咳嗽発生率は有意に低かった(63.6% vs 86.4%、P=0.014)。抜管後10分の咽頭痛スコアは有意に低かった(0[0,0] vs 1[0,2]、P<0.001)。被験者が評価した全体的な満足度スコアは、リドカイン群で有意に高かった(84.8[±6.2] vs 76.6[±8.6]、P<0.001)。抜管後10分での咳嗽の重症度もリドカイン群で有意に低かった(軽度:36.4% vs 11.4%、P=0.006、重度:9.1% vs 43.2%、P<0.001)。抜管後6時間における咽頭痛スコア、抜管後6時間の咳嗽重症度、抜管後24時間でのQoR-40については、有意差はなかった。
■気管支鏡検査前のリドカインによる梨状窩注入は、初期の咳嗽強度を軽減し、初期の咽頭痛を緩和するシンプルで効果的な方法である。6時間のアウトカムに差はなかった。
by otowelt
| 2024-07-19 00:16
| 気管支鏡