COPD増悪と心筋梗塞・肺血栓塞栓症のリスク

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LABA/LAMA/ICSのトリプル吸入療法は、LABA/LAMAと比較して全死亡率や心血管死亡率を減少させることが示されており、循環器系リスクの高い人はトリプル吸入療法にすべしという専門家の見解があります。




  • 概要
■COPDの急性増悪は、患者の予後に大きな影響を与える重要なイベントである。過去の研究で、増悪中や直後に心血管イベントのリスクが高まることが示されていたが、過去1年間の増悪歴に基づく長期的な心血管リスクについては十分に研究されていない。

■本研究は、リアルワールドのCOPD患者コホートを用いて、増悪の頻度と重症度が心筋梗塞(MI)と肺血栓塞栓症(PE)の将来のリスクにどのように関連するかを調査べることを目的とした。

■2014年1月から2022年6月までのスウェーデンSNARに登録された30歳以上のCOPD患者66,422名を対象とした。患者は、1年間の中等度増悪(経口ステロイド処方)と重度増悪(入院)の回数に基づいて分類された。主要アウトカムは、MIまたはPEによる入院または院外死亡とした。追跡期間は最長9年で、合計約26万5,000人年となった。

■MIリスク: 中等度増悪1回: 部分分布ハザード比(SHR)1.10 (95%信頼区間0.97-1.24)、中等度増悪2回以上: SHR 1.57 (95%信頼区間1.38-1.78)、重度増悪1回: SHR 1.47 (95%信頼区間1.26-1.71)、重度増悪2回以上: SHR 1.82 (95%信頼区間1.36-2.44)

■PEリスク: 中等度増悪1回: SHR 1.33 (95%信頼区間1.11-1.60)、中等度増悪2回以上: SHR 1.60 (95%信頼区間1.31-1.94)、重度増悪1回: SHR 1.99 (95%信頼区間1.59-2.49)、重度増悪2回以上: SHR 2.62 (95%信頼区間1.77-3.89)

■これらの結果は、年齢、性別、BMI、喫煙状況、FEV1予測値、ベースラインの心血管合併症、心血管保護薬の使用、社会経済的要因で調整しているが、追加の感度分析では、追跡期間を1年、2年、5年に限定した場合、関連性は追跡1年目で最も強く、時間とともに弱まる傾向が確認されたものの、5年後でも有意な関連が維持されていた。

■本研究は、COPD患者の過去1年間の増悪歴が、将来のMIとPEのリスク増加と独立して関連していることを示した。この関連は増悪の頻度と重症度が増すにつれて段階的に強くなった。



by otowelt | 2024-09-25 00:45 | 気管支喘息・COPD

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


by 倉原優
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