コントロール不良喘息に対する長期アジスロマイシンの有効性

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NNT 9という数字で、バイオよりもインパクトが強いかと思いましたが、ベースラインの喘息コントロールが比較的良好でした。

ASTの観点からはアジスロマイシンはさすがに長期投与が厳しい気がします。特に気管支拡張症を合併している場合、国際的にも賛否両論ありそうです。

バイオが投与できない発展途上国では有用な選択肢ではないかとDiscussionで論じられています。




  • 概要
■持続性のコントロール不良喘息患者に対するアジスロマイシン長期投与の効果を、喘息寛解の観点から分析した二次解析研究である。

■生物学的製剤はTh2高喘息に対して効果的だが、Th2低喘息には効果がない。一方、マクロライド系抗菌薬は閉塞性気道疾患(喘息、COPD、気管支拡張症など)の治療に広く研究されており、長期アジスロマイシン療法が遷延性コントロール不良喘息の管理に効果的であることが示されている。

■喘息の臨床的寛解(clinical remission)の達成が注目されるようになってきた。喘息寛解は、長期間にわたって高レベルの疾患コントロールを達成し、増悪を排除することが含まれるが、生物学的製剤の喘息寛解誘導の可能性が評価されてきたが、マクロライドの効果は評価されていなかった。

■遷延性コントロール不良喘息患者に対する長期アジスロマイシン療法の喘息の寛解に対する効果を評価することを目的とした。

■Asthma and Macrolides: the Azithromycin Efficacy and Safety (AMAZES)臨床試験のデータを用いた二次解析である。AMAZESは、遷延性コントロール不良喘息患者における喘息増悪に対するアジスロマイシンの効果を評価したランダム化二重盲検プラセボ対照試験だった。

■治療群は48週間にわたり週3回500mgのアジスロマイシンを追加療法として受け、対照群はプラセボを投与された。患者は12ヶ月間、定期的に追跡されました。 臨床的寛解の定義は以下の3つの要素を含んだ:①増悪なし(経口ステロイドのバーストを要する入院・救急外来受診なし)、②OCS使用なし(バーストおよび維持療法としてのOCS使用なし)、③12か月時点でのACQ-5スコア≤1。二次的な寛解の定義として、さらに肺機能の安定化(気管支拡張後の%予測1秒量≥80%または5%以上の低下なし)が含まれ、さらに完全寛解の定義として、喀痰好酸球数<3%が含まれた。

■最終追跡時のデータが利用可能であった335人の参加者(アジスロマイシン群: n=168; プラセボ群: n=167)が分析に含まれた。参加者の年齢中央値は61.0歳(四分位範囲: 51.0-68.7)で、41.5%が男性だった。ベースライン時のACQ-5スコア中央値は1.6(四分位範囲: 1.2-2.2)、気管支拡張薬投与後の%予測1秒量の平均は72.5±19.4%だった。

■アジスロマイシン群の50.6%が臨床的寛解を達成し、これはプラセボ群の38.9%に比べて高かった(P=0.032)。 プラセボと比較した場合の臨床的寛解のNNTは9だった。二次的な臨床寛解である肺機能基準を追加すると、アジスロマイシン群の50.8%、プラセボ群の37.1%が達成した(P=0.029)。完全寛解は、アジスロマイシン群23.0%、プラセボ群13.7%が達成した(P=0.058)。

■多変量解析の結果、以下の2つの要因が臨床寛解の達成と関連していた。
①ベースライン時のAQLQからスコアが1単位上昇するごとに、臨床的寛解達成の可能性が2.2倍増加した。
②前年にOCSバースト投与を必要とした患者は、臨床的寛解達成が62%低下した。

■非好酸球性喘息に対する他の有望な治療選択肢が現在ないことを考えると、アジスロマイシン投与を支持する結果である。






by otowelt | 2024-08-16 00:10 | 気管支喘息・COPD

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


by 倉原優
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