過敏性肺炎における抗原除去

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原文は、antigen removal(抗原除去)ですが、国内の過敏性肺炎ガイドラインにも評価表に「抗原除去」のキーワードがあるものの、通常実臨床においては抗原回避と呼ばれています。




  • 概要
■過敏性肺炎(HP)は、感作抗原への反復曝露によって引き起こされる間質性肺疾患である。これまでの研究では、感作抗原が特定された患者の方が、特定されなかった患者よりも生存率が高いことが示されている。そのため、抗原除去はHP治療の中心的な役割を果たすようになった。しかし、これまでの研究では、抗原除去が肺機能検査(PFT)の改善をもたらすかどうかについては一貫性がなく、抗原除去による生存率の向上も示されていなかった。 特に、家庭内の真菌除去など、抗原除去は患者にとって非常にコストがかかり、時間もかかる。そのため、抗原除去に関するデータが必要である。

■本研究の目的は、(1)抗原除去が非移植生存率に与える影響を評価し、(2)HPの後ろ向きコホートにおいて、抗原除去が肺機能検査と画像に与える影響を評価することである。

■2011年から2020年の間にテキサス大学サウスウエスタン医療センター(UTSW)で評価されたHP患者を後ろ向きに同定した。MDDを経てHP診断の確信度が中等度、高度、または確定的である患者を対象とした。患者の診療録から、年齢、性別、喫煙歴、潜在的な線維化抗原曝露、曝露の除去、PFT、GAPスコア、過敏性肺炎パネル、気管支肺胞洗浄液(BAL)の細胞数と分画、経気管支肺生検と外科的肺生検(SLB)の病理学的解釈、死亡日または肺移植日などの臨床データを抽出した。

■抗原除去は、HPの標準的なケアとして、当院の外来で一様に推奨されました。真菌はすべて家から完全に除去され、水害の原因が解決されて残留がない場合、または患者が影響を受けた家から水害やカビが明確でない家に引っ越した場合に除去されたと考えられた。鳥類への曝露は、鳥が除去され専門的な家の清掃が行われた場合、患者が家の外での鳥との接触を止めた場合、または羽毛製品が除去された場合に除去されたと考えられた。薬物治療の変更なしに、抗原除去後3〜6ヶ月以内にFVC予測値の少なくとも10%増加した場合、抗原除去後に改善したと考えられた。

■212人の患者がHPと診断され、分析に含まれた。平均年齢は62.4±11.4歳で、102人(48.1%)が男性だった。166人(78.3%)が抗原を除去し、20人(9.4%)が抗原を特定したが除去しなかった、26人(12.3%)が抗原を特定できなかった。Cox比例ハザード回帰モデルでは、抗原が特定されずに除去されなかった、または特定されたが除去されなかった患者は、抗原が特定され除去された患者よりも非移植生存率(TFS)が低かった(ハザード比1.79、p=0.02)。HRCTでの線維化の存在(ハザード比3.1、p=0.05)とGAPスコアの上昇(ハザード比1.49、p<0.001)もTFSの低下と関連していた。

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. Kaplan-Meier曲線(文献より引用、CC BY 4.0)

■抗原を特定し除去した166人のHP患者のうち、30人(18.1%)が非線維化HP、136人(81.9%)が線維化HPだった。非線維化HPの患者の17人(56.7%)が抗原除去後に%予測FVCが10%改善した。線維化HPの患者の23人(16.9%)が抗原除去後に10%改善した。HRCTでの線維化の重症度は、抗原除去によって10%以上改善した患者の割合と逆相関していた。%予測FVCが10%改善した患者のほとんどすべてが、抗原除去後のCT所見の改善、DLCOの15%改善、または症状の改善のうち少なくとも1つを示した。

■本研究は、抗原を特定し除去した患者が、抗原を特定しなかった患者や、抗原を特定したが除去しなかった患者よりも良好なTFSを示したことを示唆している。抗原除去は、線維化HPの患者の16.9%と非線維化HPの患者の56.7%で%予測FVCが10%改善することと関連していた。胸部HRCTで重度の線維化を示す患者は、軽度の線維化を示す患者に比べて、抗原除去後にFVCが改善する可能性が低かった。これらの結果は、HPの潜在的な抗原を特定するための徹底的に曝露歴を聴取する重要性を示し、線維化HPと非線維化HPの両方の治療としての抗原除去を支持している。






by otowelt | 2024-09-12 00:56 | びまん性肺疾患

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


by 倉原優
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