クロファジミンによるQT延長のリスク要因
2024年 09月 16日
肺M. abscessus症に対するクロファジミンも結構増えてきました。年単位で継続していると、頻回に心電図すべきかどうか迷います。今回の研究でもQT延長が起こるのは約4か月後とされており、定常状態に到達するあたりをまず1つのハードルとして意識しておく必要があります。ベダキリンやデラマニドのような薬剤と併用する場合は、もうちょっとタイトに検査したほうがよさそうです。肺NTM症ではキノロンとの併用がリスクと思いますので、グレースビットと併用している肺M. abscessus症では要注意ですね。
- 概要
■多剤耐性結核(MDR-TB)およびリファンピシン耐性結核(RR-TB)の治療は困難を極める。新薬や再利用薬の導入により治療成績は改善されているが、副作用の課題がまだある。特に、QT延長は重要な懸念事項である。ベダキリン、デラマニド、フルオロキノロン系抗菌薬はQTcF延長と関連することが知られているが、クロファジミンのQTcF延長への影響については不明確である。
■本研究は、RR-TB患者の治療におけるクロファジミンのQTcF延長リスクを評価することを目的とした。
■2017年5月から2019年12月の間に台湾MDR-TBコンソーシアム(TMTC)に登録されたすべてのRR-TB患者が対象となった。心電図は、従来レジメン:ベースライン、1か月目、3か月目、6か月目に実施。ベダキリン・デラマビド・短期レジメン:ベースライン、最初の2か月間は2週間ごと、3か月目・4か月目は毎月、その後は治療完了まで2か月ごと、での実施とした。
■対象患者数は321名で、平均年齢は57歳、男性が76.3%だった。使用された抗結核薬は、高用量モキシフロキサシン(600mg or 800mg):38名(11.8%)、通常用量モキシフロキサシン(400mg):224名(69.8%)、レボフロキサシン:93名(29.0%)、クロファジミン:165名(51.4%)、ベダキリン:26名(8.1%)、デラマニド:8名(2.5%)だった。
■平均フォローアップ期間242日(中央値189日、範囲4-1091日)において、QTcF≧501msecの発生患者数は、59名(18.4%) で、発生までの中央値は111日(IQR 68-242日)だった。薬剤別のQTcF最大増加中央値は、フルオロキノロン:27.1msec(IQR 13.8-42.4) クロファジミン:43.4msec(IQR 31.3-65.9) クロファジミン + フルオロキノロン:53.2msec(IQR 36.2-73.2) クロファジミン + 高用量モキシフロキサシン:41.8msec(IQR 24.6-110.3) だった。
■多変量解析におけるQTcF≧501msのリスク因子は、クロファジミン使用で調整ハザード比 4.35(95%CI 2.01-9.44)、76歳以上で調整ハザード比 3.27(95%CI 1.24-8.63)だった。薬剤組み合わせとQTcF≧501msecのリスクは、クロファジミン + フルオロキノロンで調整ハザード比 3.53(95%CI 1.66-7.50)、クロファジミン + 高用量モキシフロキサシンで調整ハザード比 6.36(95%CI 2.40-16.86)だった。
■重篤な有害事象として心室性頻脈(VT)が4名(1.2%)、TdPが1名、単形性VTが3名、突然死が1名で発生した(90歳、QTcF≧501msec繰り返し発生後)。
■治療成績(30ヶ月時点)は、治癒:257名(80.1%)、死亡:59名(18.4%)、脱落:5名(1.6%) だった。QTcF≧501msecは治療成績と有意な関連がなかった。
by otowelt
| 2024-09-16 00:04
| 抗酸菌感染症