細気管支炎型の肺NTM症が進行すると気管支拡張症にいたる


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気管支拡張症が無くても、tree-in-bud patternのみがある細気管支炎パターンでも通常NB型と分類されますが、実臨床で実感されるように、細気管支炎パターンはその後、気管支拡張症が進行していくことを示唆する貴重な報告です。ただ、後ろ向きデザインだけでなく、画像レポートがinclusionの根拠となっている点はlimitationになるでしょう。



Yoon SH, et al. Nontuberculous mycobacterial pulmonary disease presenting as bronchiolitis pattern on CT without cavity or bronchiectasis. BMC Pulm Med. 2024 Sep 2;24(1):432.

■本研究では、CT上の細気管支炎パターンがNTM-PDの早期所見である可能性があり、より重症のNTM-PDへ進行する可能性があるという仮説を立てた。

■2005年1月1日から2021年3月31日の間に、韓国の三次病院の呼吸器科を受診し、胸部CTを受けた患者を対象に後ろ向き調査を行いました。NTM-PDが疑われ、CTで気管支拡張症や空洞形成を伴わない、細気管支炎所見を示す患者を選択した。具体的には以下の患者を登録。
・CT報告書に細気管支炎を示す用語(例:細気管支炎、中心小葉性結節、分岐状陰影、樹枝状影、微小結節)が含まれている。
・CT報告書でNTM感染が鑑別診断として言及されている。
・CT報告書に空洞や気管支拡張症の記載がない。
・びまん性汎細気管支炎、肺結核、結核性胸膜炎、サルコイドーシスと診断されていない。
・CT追跡期間が1年以上ある。
・免疫不全状態でない。

■最終的に96人の患者(計515枚のCT画像)が研究対象となった。電子カルテから、初診時の基本的な人口統計学的データ(年齢、性別、BMI、併存疾患、喫煙歴、症状)を収集した。また、追跡期間中の微生物学的検査結果(NTM菌種、抗酸菌培養)と胸部CT画像も収集した。

■放射線学的進行の評価には、既存のCTスコアリングシステムを若干修正したものを使用した。気管支拡張症(最大スコア6)、細気管支炎(最大スコア6)、空洞(最大スコア9)、結節(最大スコア3)、浸潤影(最大スコア3)について評価した。放射線学的進行は、最終CT画像のいずれかの所見のスコアが初回CTスコアより大きい場合に存在すると定義した。

■96人の患者のうち、43人がNTM-PDと診断され、53人は繰り返しの抗酸菌培養検査にもかかわらずNTM-PDと診断されなかった。CT追跡期間中央値は1510.5日(IQR:862.2-3005日)だった。 NTM-PD群と非NTM-PD群の間で、慢性気道疾患(COPDと喘息)の有無を除いて、臨床的変数に有意差はなかった。

■初回CTでは、結節と浸潤影が、NTM-PD群と非NTM-PD群で異なる割合で観察された(それぞれP<0.05)。他所見に有意差はなかった。最終CT画像での放射線学的異常の頻度は、5つの所見のうち4つで群間差があった。気管支拡張症(P<0.001)、空洞(P<0.05)、結節(P<0.05)、浸潤影(P<0.05)がNTM-PD群でより頻繁に観察された。

■NTM-PD患者43人中30人(69.8%)のCT画像で放射線学的進行が確認された。対照的に、非NTM-PD患者53人中22人(41.5%)のCT画像で放射線学的進行が確認された。追跡期間中の放射線学的異常の総スコアの平均増加は、NTM-PD患者で2.05、非NTM-PD患者で0.08だった。気管支拡張症と空洞の発生のみが両群間で有意に異なり(P<0.01)、NTM-PD患者でより高頻度だった。特に、気管支拡張症の発生はNTM-PD患者の51.2%(43人中22人)、放射線学的進行を示した患者の73.3%(30人中22人)で観察された。NTM-PD群では、時間の経過とともに気管支拡張症の発生率が増加することが示された。

■43人のNTM-PD患者のうち42人でNTM菌種の同定が行われた。最多菌種はM. avium(n=18)、次いでM. intracellulare(n=12)、M. abscessus(MABS)(n=7)だった。MAC、MABS症の半数以上で放射線学的進行が観察された。これらの菌種感染患者の約半数が追跡期間中に気管支拡張症を発症した。

■本研究では、細気管支炎パターンを示すNTM-PD患者の多くが、時間の経過とともに放射線学的進行を示すことが明らかになった。特筆すべきは、放射線学的進行を示したNTM-PD患者において、最も頻繁に見られた新たな所見が気管支拡張症の発生だったことである。これは、細気管支炎パターンがNTM-PDの早期指標となる可能性を示唆している。






by otowelt | 2024-09-05 00:12 | 抗酸菌感染症

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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