PRISmと拘束性換気障害の臨床的意義
2024年 09月 30日
PRISmは、「Preserved Ratio Impaired Spirometry(1秒率が保たれている肺機能障害)」の略語で、1秒率がCOPDの基準を満たさないのに1秒量だけが低下している状態のことを指します。具体的には、1秒率≧70%かつ予測1秒量<80%の状態と定義されます。つまり、自身の努力性肺活量と比べた1秒量の割合には問題ないのですが、周囲の健康な人とくらべて1秒量が低い状態ということです。
■参考記事:
・呼吸器内科医が知っておきたい概念:PRISm(URL:https://pulmonary.exblog.jp/28617093/)
・臨床医が知るべき新病態概念「プリズム」COPDの前段階、介入は必要なのか?(URL:https://medical-tribune.co.jp/theme/doctors-eye/articles/?blogid=11&entryid=542925)
・OCEAN研究:日本人におけるPRISmの有病率(URL:https://pulmonary.exblog.jp/29681607/)
- 概要
■研究者らは、ノルウェーの一般人口から30-46歳の男性26,091人を対象に、平均26年間の長期追跡調査をおこなった。彼らは PRISm と RSP を相互排他的なカテゴリーとして定義し、正常および閉塞性パターンと比較した。
■PRISm は肥満、喫煙、低学歴と強く関連していた。また、咳、痰、喘鳴、喘息、気管支炎などの呼吸器症状が多く見られ、心疾患の有病率が最も高いことが分かった。死亡率に関しては、PRISm 単独のグループでは主に呼吸器疾患による死亡リスクが増加し、早期の心血管死亡リスクの可能性も示唆された。
■RSP は肥満と低体重の両方、そして低学歴と関連していたが、喫煙率は正常肺機能群と同程度だった。RSP の特徴的な症状は呼吸困難が主だった。死亡率に関しては、RSP 単独のグループは糖尿病、心血管疾患、がんによる死亡リスクが増加していた。
■興味深いことに、PRISm と RSP の両方の特徴を持つグループ(PRISm+RSP)は、全原因死亡、心血管疾患、糖尿病、がんによる死亡リスクが最も高くなっていた。
■これらの結果は、PRISm と RSP が異なる病態生理を反映している可能性を示唆している。PRISm は閉塞性疾患の前段階を反映している可能性があり、一方で RSP は肺外疾患との関連が強く、生命早期の要因が影響している可能性がある。この研究の重要性は、従来あまり区別されていなかった PRISm と RSP の臨床的意義の違いを明らかにしたことにある。
by otowelt
| 2024-09-30 00:08
| 気管支喘息・COPD