肺NTM症の菌種の疫学的傾向と臨床的重要性
2024年 09月 22日
複十字病院からの素晴らしいデータです。MABSが明確に増加しており、MACに続く重要菌種として今後向き合っていかねばなりません。
- 概要
■この論文は、日本の結核専門病院で2017年から2021年にかけて行われた肺NTM症の疫学的傾向と臨床的関連性に関する研究について報告したものである。
■東京の結核予防会複十字病院で2017年1月から2021年12月までに収集された呼吸器検体の抗酸菌培養検査結果を分析した。NTM種の臨床的関連性を評価するため、肺NTM症と診断された患者の割合を分析した。各NTM種の発生率と臨床的関連性を2次元散布図で示した。
■2017年から2021年の間に、65,368件の呼吸器検体において抗酸菌培養検査が実施された。NTMは3,177人の患者から12,802検体で検出され、結核菌は1,261人の患者から6,275検体で検出された。2018年以降、肺NTM症の症例数は肺結核のそれを上回った。
■2017年から2021年の間の肺NTM症の新規症例の内訳は以下の通りだった。M. avium: 973例 (65.0%) 、M. intracellulare: 260例 (17.4%) 、M. abscessus subsp. massiliense (MMA): 90例 (6.0%)、M. abscessus subsp. abscessus (MAB): 69例 (4.6%) 、M. kansasii: 34例 (2.3%) 。M. abscessus species(MABS)による肺NTM症の症例数が顕著に増加し、2017年から2021年の間の新規症例の10.6%を占めた。肺MAC症における女性の割合が増加し、1980年代の58%から2017-2021年には77%になった。NB型が多くなった。2017年から2021年の間に肺MAC症の91.5%がNB型だった。
■一般的なNTM(MMA、MAB、M. intracellulare、M. avium、M. kansasii)の臨床的関連性は57%~72%の範囲だった。7種のNTM(M. shinjukuense、M. triplex、M. shimoidei、M. europaeum、M. paraense、M. kyorinense、M. szulgai)が一般的なNTMよりも高い臨床的関連性を示した。11種のNTM(M. fortuitum、M. mucogenicum、M. gordonae、M. lentiflavum、M. xenopi、M. chelonae、M. kumamotonense、M. paragordonae、M. mageritense、M. septicum、M. peregrinum)は50%未満の臨床的重要性であった。
■MABSの増加の理由として、MABS症がMAC症の治療中・治療後に発症する可能性があることや、環境要因(地球温暖化など)の影響が考えられている。
■2017年から2021年の日本の結核専門医療機関における肺NTM症の疫学的傾向を明らかにした。COVID-19パンデミック中に肺NTM症の新規症例数が一時的に減少したものの、その後再び増加傾向にあることが示された。特に、MABS症の増加が顕著だった。MALDI-TOF MSの使用により、まれなNTMの同定機会が増加した。
by otowelt
| 2024-09-22 00:44
| 抗酸菌感染症