サルコイドーシスに対するACE阻害薬 vs ARB

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完全に循環器は専門外なのでエラそうなことは書きませんが、サルコイドーシスの場合はARBのほうがよいのかもしれません。






  • 概要
■この研究は、サルコイドーシス患者におけるレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAAS)の調節が健康アウトカムに与える影響を調査した大規模な多施設研究である。

■研究者らはTriNetX Research Networkデータベースを使用し、2013年から2023年の間にサルコイドーシスと診断され、ACE阻害薬またはARBを処方された18歳以上の成人患者を対象とした。

■他の肉芽腫性疾患や自己免疫疾患の診断がある患者は除外された。傾向スコアマッチングを用いて、両群間の基本的特性の差を調整した。主要アウトカムは、ACE阻害薬またはARB処方後5年間の死亡率とした。二次的アウトカムに、心停止、呼吸不全、心不全、急性心筋梗塞、敗血症、脳梗塞の発生率が含まれた。

■マッチ後、ACE阻害薬群とARB群はそれぞれ4,676人の患者で構成された。死亡率は、ACE阻害薬を処方されたサルコイドーシス患者は、ARBを処方された患者と比較して、高い死亡リスクを示した(ハザード比1.32、95%信頼区間1.15―1.51、p<0.0001)。
・敗血症:ACE阻害薬群はARB群と比較して敗血症のオッズ比が高かった(オッズ比1.51、95%信頼区間1.24-1.83、p<0.0001)。
・呼吸不全:ACE阻害薬群はARB群と比較して呼吸不全のリスクが高かった(オッズ比1.32、95%信頼区間1.21―1.55、p=0.0005)。
・急性心筋梗塞:ACE阻害薬群はARB群と比較して急性心筋梗塞のリスクが高かった(オッズ比1.28、95%信頼区間1.03―1.60、p=0.0287)。
・脳梗塞:ACE阻害薬群はARB群と比較して脳梗塞のリスクが高かった(オッズ比1.29、95%信頼区間1.01―1.65、p=0.0376)。
・心停止と心不全のリスクは両群間で有意差はなかった(p>0.05)。

■この研究結果は、ACE阻害薬とARBがサルコイドーシス患者のアウトカムに異なる影響を与える可能性を示唆している。

■通常、ACE阻害薬とARBは様々な疾患において同様の効果を示すことが多いため、この結果は予想外であった。ACEは、アンジオテンシンIIの生成だけでなく、ブラジキニンや他の生理活性ペプチドの分解にも関与している。ACE2は、アンジオテンシンIIをアンジオテンシン(1-7)に変換する。アンジオテンシン(1-7)は、抗炎症作用や抗線維化作用を持つことが知られている。ACE阻害薬の使用は、このバランスを崩す可能性がある。ARBはAT1を選択的にブロックするが、AT2受容体は阻害しない。ARBの使用により、AT2受容体シグナリングが維持されることで、臓器機能の保護につながる可能性がある。






by otowelt | 2024-10-06 00:32 | サルコイドーシス

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


by 倉原優
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