喘息増悪に対する小青竜湯の効果
2024年 10月 22日
喘息増悪に対する小青竜湯についての報告です。青龍刀と響きが似ているなあといつも思っています。その他、麻子仁丸とマシンガンなど・・・。強そうな武器に見えてきますね。
- 概要
■小青竜湯は8つの生薬から構成される漢方薬で、気管支拡張作用や抗炎症作用が報告されているが、実臨床での喘息増悪に対する効果は十分に解明されていなかった。
■本研究は日本DPCデータベースを用いた後ろ向きコホート研究である。2010年7月から2022年3月の間に喘息増悪で入院した18歳以上の患者を対象とした。気管挿管による人工呼吸管理を受けた患者や3日以内に退院した患者は除外された。同一患者の複数回の入院がある場合は最後の入院のみを解析対象とした。入院後3日以内に小青竜湯を投与された患者を小青竜湯群、それ以外を対照群とした。
■主要評価項目は、生存退院した患者における入院中の静注ステロイド総投与量、副次評価項目は院内死亡率、生存退院した患者の在院日数とした。傾向スコアオーバーラップ重みづけにより患者背景を調整し、小青竜湯使用の効果を推定した。
■適格基準を満たした51,459人の患者のうち、131人が小青竜湯群、51,328人が対照群に割り付けられた。傾向スコアオーバーラップ重みづけにより小青竜湯群は対照群と比較して、入院中の静注ステロイド総投与量が有意に少なくなった(67 mg vs 149 mg; 差 -80 mg; 95%信頼区間 -68 to -92)。院内死亡率(1.9% vs 3.5%; 差 -1.5%; 95%信頼区間 -28 to 25)および在院日数(17.3日 vs 18.3日; 差 -0.9日; 95%信頼区間 -4.2 to 2.4)については、両群間で有意差はなかった。年齢層別のサブグループ解析では、70-79歳(差 27 mg; 95%信頼区間 -50 to -3.5)および80歳以上(差 96 mg; 95%信頼区間 -117 to -75)の群で、小青竜湯使用と静注ステロイド投与量の減少との関連が示された。
■小青竜湯の作用機序については、これまでの in vitro および in vivo 研究で以下のような効果が報告されている。
・Th2細胞活性の抑制とTh1細胞活性の維持
・気管支上皮でのNF-κB活性化の抑制
・炎症細胞の活性抑制、炎症性メディエーター、ケモカインの抑制
■国内データベースを用いて実臨床での小青竜湯の効果を評価した。特に70歳以上の高齢者で効果が顕著であったことは、高齢者の喘息管理における新たな選択肢となる可能性を示唆している。
by otowelt
| 2024-10-22 00:11
| 気管支喘息・COPD