慢性肺アスペルギルス症27,888例解析

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レセプトデータから得られた、慢性肺アスペルギルス症27,888例の疫学研究です。TB既往やNTM症は基本的に予後不良因子という報告が多いですが、今回の研究では予後良好サイドで有意差がついています。「抗酸菌症がある患者では真菌症の診断閾値が低い」という交絡もあるのかもしれません。






  • 概要
■CPAは近年、その健康への影響の大きさから注目を集めているが、全国規模での詳細な疫学データや予後に関する情報は限られていた。本研究は、日本のレセプトデータベースを用いて、CPAの罹患率、有病率、患者特性、治療内容、予後を明らかにすることを目的とした。

■2014年から2022年のNDBデータを使用し、CPA診断コードと抗真菌薬処方記録の組み合わせでCPA患者を特定した(27,888例)。侵襲性肺アスペルギルス症の診断コードがある患者は除外された。2016年、2018年、2020年、2022年の各年で新規発症患者(罹患率)と有病患者(有病率)を算出した。また、患者の基礎疾患、治療内容、医療費、生存率などを分析した。

■CPA罹患率は2016年の10万人年あたり3.5人から2022年の2.1人に減少した。有病率は9.0-9.5人/10万人で安定していた。男性の発生率・有病率は女性の約2倍だった。高齢者で発生率・有病率が高く、南部の地域でより高い傾向があった。新規罹患患者の年齢中央値は72-74歳だった。最多併存疾患は糖尿病(45.7-52.7%)と慢性心不全(38.2-45.7%)だった。基礎肺疾患として最も多かったのはCOPD(37.4-41.6%)だった。

■経口イトラコナゾールの使用が42.2%から31.1%に減少し、ボリコナゾールが49.7%から56.0%に増加した。2020年からポサコナゾールが使用可能となり、2022年には9.0%で使用されていたた。 約50%の患者が年間1回以上、約30%が年間4回以上経口ステロイドを使用していた。

■1年、3年、5年生存率はそれぞれ64.6%、47.7%、41.0%だった。多変量Cox比例ハザード分析により、以下の因子が独立した予後不良因子として同定された。特に間質性肺疾患は23.3%の患者に認められ、予後不良と強く関連していた。結核、非結核性抗酸菌症、その他の慢性肺疾患の既往は予後良好因子となった。
・65歳以上 (ハザード比2.65, 95%信頼区間2.54-2.77)
・男性 (ハザード比1.24, 95%信頼区間1.20-1.29)
・COPD (ハザード比1.05, 95%信頼区間1.02-1.09)
・肺癌 (ハザード比1.12, 95%信頼区間1.06-1.18)
・ILD (ハザード比1.19, 95%信頼区間1.14-1.24)
・頻回の経口ステロイド使用 (ハザード比1.13, 95%信頼区間1.09-1.17)

■2016年に診断された患者の追跡調査では、イトラコナゾール開始患者のうち、6か月以上継続した割合は35.0%(生存者の44.2%)、12か月以上は19.7%(生存者の29.3%)だった。 ボリコナゾール開始患者では、6か月以上継続した割合は33.9%(生存者の43.2%)、12か月以上は17.5%(生存者の26.5%)だった。

■CPAの罹患率は減少傾向にあったが、有病率は安定していた。






by otowelt | 2024-10-10 00:30 | 感染症全般

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


by 倉原優
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