マクロライド耐性MACに対してマクロライド曝露をなくすと感受性が回復する?
2024年 10月 11日
話題の論文です。学術講演会で聞いた時、会場がザワついていた記憶があります。ヘテロ感染は感染症全体で1つのテーマですが、抗酸菌もその議論が盛り上がるかもしれませんね。実はこの背景に、遺伝子型DST vs 表現型DSTという構図もあって、多次元的に解釈しないといけないのでしょう。
MABSのマクロライド耐性もrrl変異が関与するシーンがあるので、このロジックは成り立つかもしれませんね。
- 概要
■肺MAC症は世界的に増加傾向にあり、公衆衛生上の重要な問題となっている。現在のガイドラインでは、マクロライド系抗菌薬を含む多剤併用療法が推奨されているが、治療中に9.2-12.0%の患者でマクロライド耐性が出現することが報告されている。マクロライド耐性の出現は予後不良因子であり、死亡率の上昇にも関連している。臨床現場では、マクロライドの気管支拡張症に対する免疫調節作用を期待して、ときにマクロライド維持療法が継続されることがあるが、その有効性は明らかではない。
■本研究の目的は、マクロライド耐性肺MAC症における長期的なマクロライド感受性可塑性とマクロライド維持療法の影響を調査することである。
■本研究は刀根山医療センターで実施された単施設後ろ向き研究で、2012年1月から2022年6月の間にマクロライド耐性肺MAC症と新たに診断され、マクロライド耐性出現後の薬剤感受性検査結果が追跡できた68例を対象とした。
■VNTRによる同一性評価、全ゲノムシークエンスによるrrl遺伝子変異の検出、分離株のin vitro増殖能の比較がおこなわれた。
■マクロライド耐性肺MAC症と診断された、43例がマクロライド療法を継続し、25例がマクロライドを含まない治療を継続された。予想に反して、マクロライドを含まない治療を受けた25例中13例(52%)でマクロライド感受性が再度出現した。一方、マクロライド療法を継続した43例においては、わずか1例(2%)がマクロライド感受性が再度出現した。
■30例の患者から得られた60株のMAC分離株を比較したところ、3例(10%)でVNTRスコアに明らかな変化が観察された。マクロライド感受性が再度出現した7例中2例でVNTRの変化が見られ、これらの患者では新たなマクロライド感受性株の再感染またはポリクローナル感染の優位性が示唆された。
■ 全ゲノムシークエンスの結果、9例(30.0%)でマクロライド耐性診断時または最新の分離株において、野生型(AA)と変異型遺伝子型(AC、AG、CA、GA)の共存が確認された。感受性が再度出現を経験した4例では、VNTRの変化なしに遺伝子型変化が起こっていた。
■マクロライド感受性が再度出現した患者では、マクロライド感受性株が耐性株と比較して高いin vitro増殖率を示した。一方、マクロライド感受性を回復しなかった患者では、このような差は観察されなかった。
■マクロライド耐性肺MAC症における耐性は可逆的であり、マクロライドの継続が感受性の再出現を妨げる可能性があることを示している。耐性を有する患者に対するマクロライドの継続使用については、臨床的に再評価する必要がある。一部ではマクロライド耐性分離株において、野生型とrrl遺伝子変異が共存していた。マクロライドの圧が除かれると、マクロライド感受性株が優位になり、耐性から感受性への転換が起こる可能性がある。
by otowelt
| 2024-10-11 08:00
| 抗酸菌感染症