IPF・線維性ILDの咳嗽

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IPFと線維性ILDにわけて大規模なコホートで咳嗽VASを報告した、貴重な報告です。





  • 概要
■咳は線維性ILD患者の主要な症状の一つだが、その重症度や経時的変化、予後との関連についてはあまり知られていない。この研究は、特発性肺線維症(IPF)および非IPF線維性ILD患者における咳の重症度の有病率、経時的変化、関連因子、および予後的意義を評価することを目的としてた。

■カナダの多施設共同レジストリ(CARE-PF)から、IPF患者1,061名と非IPF線維性ILD患者2,825名のデータを分析した。咳の重症度は100mmのVASを用いて評価された。

■IPF患者の方が非IPF線維性ILD患者よりもベースライン時の咳の重症度が高かった(中央値24mm vs 20mm, p<0.001)。 VAS 30mm以上の中等度以上の咳の有病率は、IPF患者で43%、非IPF線維性ILD患者で39%だった。

■両群とも、肺機能低下(FVC%予測値とDLCO%予測値の低下)と胃食道逆流症(GERD)の存在が、より重度の咳と独立して関連していた。 非IPF線維性ILD群では、喘息の存在も咳の重症度と関連していた。咳の重症度は、両群ともEQ-5D-5L、EQ-VAS、SGRQで測定された健康関連QOLの低下と独立して関連していた。咳の重症度が高いほど、両群ともDLCOの年間低下が大きく、疾患進行のリスクが高く、移植なし生存率が低いことと独立して関連していた。IPF群(年間変化2.2mm; 95%信頼区間1.6-2.9mm)の方が非IPF線維性ILD群(年間変化1.1mm; 95%信頼区間0.8-1.4mm)よりも咳の重症度の増加が大きかった(p=0.004)。 ILD標的治療の有無や肺機能低下の有無による咳の重症度の経時的変化に有意差はなかった。

■この研究は、線維性ILD患者において咳が高頻度で発生し、時間とともに悪化する傾向があること、また咳の重症度が健康関連QOLの低下、疾患進行のリスク増加、生存率の低下と独立して関連していることを明らかにした。これらの結果は、線維性ILD患者の管理において咳の評価と治療が重要であることを示唆しており、効果的な咳の治療法の開発が急務であると結論づけている。






by otowelt | 2024-11-02 00:22 | びまん性肺疾患

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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