ニンテダニブ150mg1日2回と100mg1日2回の比較
2024年 10月 30日
INPULSIS 1・2試験では、ニンテダニブ治療を受けた患者の60%以上で下痢が発生しており、リアルワールドでは添付文書通り「患者の状態によりニンテダニブとして1回100mgの1日2回投与へ減量する」はよく行われるプラクティスです。この妥当性について論じた報告です。
- 概要
■抗線維化薬の使用率は依然として低く、管理データを用いた研究では、適格なIPF患者の10〜20%程度にとどまっている。レジストリを用いたデータでは使用率が高く58-71%の範囲とされているが、薬剤関連の毒性、特に消化器系の副作用によって使用が制限されている。ニンテダニブでは60%以上の患者で下痢が報告されており、ランダム化比較試験データでは150mg1日2回の投与が支持されている。臨床的には毒性を制限するために100mg1日2回に減量されることがある。
■OptumLabs Data WarehouseとMedicare Fee for Service (FFS)データベースを組み合わせた大規模な管理データセットを用いて、IPF患者におけるニンテダニブの投与量の影響を評価した。このデータソースは、現在入手可能な最大の観察データセットであり、アメリカのIPF患者のほとんどを含んでいる。 研究では、65歳以上の患者で、150mg1日2回と100mg1日2回の投与量を比較した。ICD-9、10のIPFコードを使用して、ニンテダニブ処方のある成人を同定した。研究者らは、100mgまたは150mgの投与量のみを受けた患者を対象とし、これ以外の投与量へ変更した患者は除外した。ピルフェニドンへの曝露を考慮してマッチングをおこなった。ピルフェニドンに曝露された患者は各投与量の約12%だった。
■主要アウトカムは全死因死亡率、副次的アウトカムは入院率で、2投与量間で比較した。傾向スコアマッチによって、各投与量グループ1,813人からなる1:1のコホートを構築した。
■データセットから、150mg1日2回投与の患者7,522人と100mg1日2回投与の患者1,813人が対象となった。傾向スコアマッチによって、最終的に各群1,813人の比較グループとなった。全死因死亡率は、2投与量グループ間で有意差はなかった。1日2回100mg投与群の死亡率は1日2回150mg投与群よりわずかに悪かったものの、統計的有意差には達しなかった(ハザード比0.74; 95%信頼区間0.54-1.01, p = 0.058)。 入院リスクも差はなかった(ハザード比0.89;95%信頼区間0.78-1.02, p = 0.1)。 150mgと100mgの投与量間を切り替えた患者のサブグループ解析でも、主要アウトカムおよび副次的アウトカムに有意差はなかった。
■この大規模な観察データセット解析では、従来の150mg1日2回投与と減量した100mg1日2回投与のレジメン間で臨床アウトカムに有意差はなかった。RCTではなく観察データであるため、このリアルワールドデータの分析が、ニンテダニブの減量投与の同等性・有効性の決定的なエビデンスとなるわけではない。
by otowelt
| 2024-10-30 00:03
| びまん性肺疾患