喘息増悪に対するリリーバー:ICS/ホルモテロール vs ICS/SABA vs SABA
2024年 11月 14日
海外ではICS/SABA製剤(Airsupra)が出ているのですが、日本ではSABAあるいはMART(ICS/ホルモテロール:シムビコート® or ブデホル®)の2択になります。
現状、GINA2024のトラック1に指定されているので、ICS/ホルモテロール1強と言えます。
- 概要
■喘息の最適なリリーバー療法については依然として明確な結論が出ていない。本研究では、短時間作用性β2刺激薬(SABA)単独と、吸入ステロイド薬(ICS)とSABAの併用(ICS/SABA)、そしてICSと速効性の長時間作用性β2刺激薬(LABA)であるホルモテロールの併用を比較検討することを目的とした。
■MEDLINE、Embase、CENTRALデータベースを2020年1月から2024年9月27日まで検索し、言語制限なくランダム化臨床試験(RCT)を収集した。2名のレビュアーが独立して文献選択、データ抽出、バイアスリスク評価を実施した。
■主要評価項目として、喘息症状のコントロール(ACQ-5スコア)、喘息関連QOL(AQLQスコア)、重症増悪のリスク、重篤な有害事象のリスクを設定した。
■解析対象となったのは27件のRCTで、被験者は50,496名(平均年齢41.0歳、男性40%)だった。重症増悪に関して、SABA単独と比較した場合、ICS/ホルモテロールはリスク比0.65(絶対リスク差-10.3%)、ICS/SABAはリスク比0.84(絶対リスク差-4.7%)と、両者とも高いエビデンスの確実性で増悪リスクを低下さた。喘息コントロールについても、SABA単独と比較して両治療法とも改善を示し、MCID到達のリスク比はICS/ホルモテロールで1.07(絶対リスク差+4.1%)、ICS/SABAで1.09(絶対リスク差+5.4%)だった。ICS/SABAとICS/ホルモテロールの間接比較では、重症増悪についてICS/ホルモテロールがより効果的であり(リスク比0.78、絶対リスク差-5.5%)、これは中程度のエビデンスの確実性で示された。注目すべき点として、この効果は患者の重症度によって異なり、GINA 2024のステップ分類で軽症(ステップ1)では絶対リスク差-1.9%であったのに対し、重症(ステップ4)では-5.5%と、重症度が高いほどICS/ホルモテロールの効果が顕著になることが示された。
■安全性に関しては、SABA単独と比較して、ICS/ホルモテロール(絶対リスク差-0.6%、高い確実性)もICS/SABA(絶対リスク差0%、中程度の確実性)も、重篤な有害事象リスクの増加は観察されなかった。
■本研究の重要な特徴として、包括的な検索戦略により以前のレビューに含まれていない12の試験を追加し、最近FDAが承認したICS/SABAの研究も含めた点が挙げられる。また、同一の維持療法下でのリリーバー戦略の比較に限定し、患者にとって重要なアウトカムに焦点を当てた点も特徴といえる。一方で、ICS/ホルモテロールとICS/SABAを直接比較したRCTが存在しないこと、小児のみを対象とした試験が2件のみであること、SABAとイプラトロピウムの併用に関する情報が欠如していることなどが本研究の限界として挙げられる。現在、GINAとNAEPPはSABA単独よりもICS/ホルモテロールを推奨リリーバーとしたが、最近FDAがICS/SABAをリリーバーとして承認したことで、最適な選択については新たな検討が必要な状況となっている。
■ICS/ホルモテロールとICS/SABAは、いずれもSABA単独と比較して喘息増悪リスクを低下させ、喘息コントロールを改善させることが示された。特にICS/ホルモテロールは、中等度のエビデンスの確実性でICS/SABAよりも増悪予防効果が高いことが示唆された。
by otowelt
| 2024-11-14 00:33
| 気管支喘息・COPD