ABRA研究:喘息・COPDの好酸球性増悪に対するベンラリズマブ

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実臨床では増悪時にCOPDか喘息かという診断はあやふやになりがちなので、現場の好酸球性増悪にマッチした研究だと思います。しかし、3群のうち2群をプールするのはアリなんでしょうか。BENRA群とBENRA plus PRED群の間に有意差は認められておらず(HR 0.76 [95% CI 0.43-1.36])、問題ないでしょうか。

COPDの世界には、デュピクセント®を筆頭に各製剤が参入しています。作用機序的には、traitsがはっきりしておれば、どの背景疾患でも効果があるでしょう。

添付文書上はともかく、増悪時にバイオを使わない、という常識はもうなくなりつつあります。





  • 概要
■喘息および慢性閉塞性肺疾患(COPD)の好酸球性増悪に対するベンラリズマブの効果を検討した第2相二重盲検無作為化試験である。


■対象は18歳以上の成人で、COPDの場合は10pack-year以上の喫煙歴と気管支拡張薬投与後のFEV1/FVCが0.7未満、喘息の場合は10pack-year未満の喫煙歴と気道可逆性が必要とされた。増悪時に血中好酸球数が300/μL以上であることがランダム化の条件とされた。


■患者は1:1:1の割合で3群に無作為に割り付けられた。PRED群はプレドニゾロン30mg/日を5日間内服とプラセボの皮下注射、BENRA群はプラセボ錠とベンラリズマブ100mg単回皮下注射、BENRA plus PRED群は両者の実薬を投与された。ランダム化は、診断名(喘息またはCOPD)、安定期のFEV1(50%以上か未満か)、喫煙状況、前年の増悪回数(2回未満か以上か)で層別化された。TioFarma BV社がプレドニゾロンとそのプラセボ錠を、アストラゼネカ社がベンラリズマブとそのプラセボ注射を製造し、色、形状、味などを一致させることで盲検性を確保した。全ての患者は投与後2時間以上モニタリングされ、ランダム化時には抗菌薬は投与されなかった。


■追跡期間は90日間で、無作為化後7日、14日、28日、90日目に評価が行われた。各評価時には気管支拡張薬投与後の肺機能検査、FeNO測定、患者報告アウトカム質問票への記入が実施された。喘息患者はACQ7・ACT・AQLQ、COPD患者はCATを用いた評価が行われた。全患者でmMRCスケール、EuroQoL 5D-3L、咳嗽、喘鳴、呼吸困難、喀痰量、喀痰性状に関するVASによる評価が実施された。


■PRED群での治療失敗は74%に対し、ベンラリズマブを投与した2群を統合した群(pooled-BENRA)では45%と有意に低下した(オッズ比0.26、95%信頼区間0.13-0.56、p=0.0005)。28日目のVASスコアもpooled-BENRA群で有意に改善した(平均差49mm、95%信頼区間14-84、p=0.0065)。副次評価項目では、pooled-BENRA群はPRED群と比較して、mMRC、ACQ7、AQLQで臨床的に意味のある改善を示した。有害事象は324件報告され、高血糖および副鼻腔炎/副鼻腔感染症はプレドニゾロン投与群でのみ発生した。死亡例はなかった。


■喘息あるいはCOPDの好酸球性増悪に対する単回のベンラリズマブ投与は、プレドニゾロン単独と比較して、治療失敗リスクを74%低減し、NNTは4であった。







by otowelt | 2024-12-24 00:31 | 気管支喘息・COPD

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


by 倉原優
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