メタアナリシス:PRISmの有病率は12%
2025年 01月 23日
呼吸器内科医にとっては認知度が上がってきたPRISmについての新しい論文です。トップジャーナルに載りやすい傾向があるので、COPDの研究をされている方は、スパイロメトリーの解析に一味加えて別論文を作成されてはいかがでしょうか。
PRISmは、1秒率がCOPDの基準を満たさないのに1秒量だけが低下している状態のことを指します。具体的には、1秒率≧70%かつ予測1秒量<80%の状態と定義されます。つまり、自身の努力性肺活量と比べた1秒量の割合には問題ないのですが、周囲の健康な人とくらべて1秒量が低い状態ということです。
■参考記事:
・呼吸器内科医が知っておきたい概念:PRISm(URL:https://pulmonary.exblog.jp/28617093/)
・臨床医が知るべき新病態概念「プリズム」COPDの前段階、介入は必要なのか?(URL:https://medical-tribune.co.jp/theme/doctors-eye/articles/?blogid=11&entryid=542925)
・OCEAN研究:日本人におけるPRISmの有病率(URL:https://pulmonary.exblog.jp/29681607/)
・PRISmと拘束性換気障害の臨床的意義(URL:https://pulmonary.exblog.jp/32747391/)
■COPDの有病率は世界中で増加している。PRISmの患者は、正常肺機能を持つ患者と比較して死亡リスクが高いというエビデンスがある。PRISm の臨床的特徴、世界的なPRISm有病率、リスク要因については残された課題が多い。
■2 人のレビュー担当者が引用を独立してスクリーニングし、システマティックレビューとメタアナリシスのためのデータを抽出した。質は、Effective Public Health Practice Project ツールで評価した。
■52研究が包含基準を満たし、33の研究がメタアナリシスに含まれた。統合されたPRISmの有病率は12%(95%信頼区間0.10、0.15)で、低・中所得国の有病率は高所得国よりも高かった(19% vs 11%)。併存糖尿病はPRISmに関連する重要なリスク因子であったが、女性と喫煙のデータはまちまちだった。PRISmは、全死因死亡率(オッズ比1.41、95%信頼区間1.08-1.83、p = 0.02)、心血管疾患死亡率(オッズ比1.84、95%信頼区間1.31-2.58、p < 0.01)、呼吸器疾患死亡率(オッズ比1.82、95%信頼区間1.08-3.05、p = 0.03)の上昇と関連していた。 PRISm は肺がん診断の減少とは関連がなかった (p=0.46)。低中所得国で実施された研究は質評価が低かった。
■PRISm の患者は、全死因、心血管疾患、呼吸器疾患による死亡リスクが高い。修正可能な PRISm リスク要因を認識してターゲットにすることで、増大する PRISm の負担を軽減することが期待される。
by otowelt
| 2025-01-23 00:24
| 気管支喘息・COPD