COPDに対する「ビレーズトリ vs テリルジー」後者に軍配

COPDに対する「ビレーズトリ vs テリルジー」後者に軍配_e0156318_02151181.png

COPDに対するトリプル吸入製剤には、ブデソニド・グリコピロニウム・ホルモテロール(ビレーズトリ)とフルチカゾン・ウメクリジニウム・ビランテロール(テリルジー)の2つがあります。前者はpMDIで吸いやすいのですが、吸入回数が1日2回と多いです。後者はDPIで粉っぽいですが、吸入回数が1日1回です。

ビレーズトリはアストラゼネカ社の製品ですが、タービュヘイラーとはデバイスが異なるので、喘息のMARTとは少し勝手が違います。

さて、GSK推しの結果となったわけですが、GSK社からの直接的な資金提供や著者としての関与は記載されていません。だからこそBMJアクセプトとなったのかもしれません。知らんけど。




■この研究は、COPD治療に使用される上記2種類の単一製剤トリプル療法(SITT)の有効性と安全性を比較したものである。研究対象となったのは、1日2回投与のpMDIであるブデソニド・グリコピロニウム・ホルモテロールと1日1回投与のDPIであるフルチカゾン・ウメクリジニウム・ビランテロール。

■研究は2021年1月から2023年9月までの期間に、レセプトデータを用いて実施された。40歳以上でCOPD診断を受けた患者のうち、これらの吸入器を新規に使用開始した患者を対象とした。

■主要評価項目は、中等度または重度のCOPD増悪(有効性)と肺炎による入院(安全性)とされた。傾向スコアマッチングを用いて1:1の割り付けを行い、20,388組のペアが分析対象となった。

■結果、ブデソニド・グリコピロニウム・ホルモテロール群は、フルチカゾン・ウメクリジニウム・ビランテロール群と比較して、中等度または重度のCOPD増悪のリスクが9%高かった(ハザード比1.09、95%信頼区間1.04-1.14)。特に重度の増悪については29%高いリスクが認められた(ハザード比1.29、95%信頼区間1.12-1.48)。肺炎による入院リスクは両群で同等であった(ハザード比1.00、95%信頼区間0.91-1.10)。

■この研究結果は、臨床的な意義に加えて環境面での影響も示唆している。pMDIに含まれるヒドロフルオロアルカンは温室効果ガスの排出に寄与するため、多くの医療システムがその使用削減を目指している。本研究により、DPIであるフルチカゾン・ウメクリジニウム・ビランテロールが、臨床効果においても優れている可能性が示された。

■研究にはいくつかの限界がある。残余交絡の可能性は完全には排除できず、吸入器の使用手技や実際の使用状況についてのデータは得られなかった。また、追跡期間が比較的短く、長期的な有効性と安全性については更なる研究が必要である。

■結論として、COPDに対する単一吸入器トリプル療法において、フルチカゾン・ウメクリジニウム・ビランテロールは、ブデソニド・グリコピロニウム・ホルメテロールと比較して良好な臨床転帰を示した。この結果は、環境への影響も考慮した治療選択の際の判断材料となり得る。ただし、DPIがすべての患者に適しているわけではないため、個々の患者の状況に応じた選択が必要である。





by otowelt | 2025-01-13 12:01 | 気管支喘息・COPD

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


by 倉原優
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31