WILLOW試験サブグループ解析:気管支拡張症に対するブレンソカチブ
2025年 02月 03日
2025年第3四半期にアメリカ・インスメッドから気管支拡張症に対するブレンソカチブが発売されることがほぼ決定しています。
■ブレンソカチブは、好中球セリンプロテアーゼの活性化を防ぐことで肺の炎症を抑制する経口の可逆的ジペプチジルペプチダーゼ1(DPP1)阻害薬である。
■非嚢胞性線維症(non-CF)気管支拡張症患者を対象とした第II相WILLOW試験におけるブレンソカチブのサブグループ解析の結果である。WILLOW試験では、気管支拡張症患者における増悪までの期間を延長することが示されていた。
■本研究では、以下の基準に基づいてサブグループ解析を実施した:気管支拡張症重症度指数(BSI)スコア(軽症≤4、中等症5-8、重症≥9)、前年の増悪回数(2回または3回以上)、血中好酸球数(<300または≥300 cells/µL)、長期マクロライド使用(6ヶ月以上の使用の有無)、および緑膿菌培養(陽性/陰性)。
■主要評価項目は初回増悪までの期間、増悪の年間発生率、肺機能の変化である。
■試験には計256人がランダムに割り付けられ、プラセボ群87人、ブレンソカチブ10mg群82人、25mg群87人が含まれた。患者の平均BSIスコアは8.3±4.4で、BSIスコアによる内訳は軽症(≤4)が53人(20.7%)、中等症(5-8)が89人(34.8%)、重症(≥9)が114人(44.5%)であった。増悪リスクに関して、ブレンソカチブ投与群はプラセボ群と比較して、全てのサブグループで低下を示した。ハザード比(95%信頼区間)は、BSI軽症群で0.28(0.08-0.96)、中等症群で0.75(0.35-1.60)、重症群で0.61(0.35-1.04)であった。前年の増悪回数別では、2回群で0.56(0.34-0.90)、3回以上群で0.71(0.32-1.59)であった。 血中好酸球数による分類では、300 cells/µL未満群で0.66(0.42-1.06)、300 cells/µL以上群で0.49(0.20-1.20)のハザード比を示した。長期マクロライド使用の有無別では、非使用群で0.60(0.38-0.94)、使用群で0.60(0.25-1.45)であった。緑膿菌培養陰性群では0.54(0.32-0.92)、陽性群では0.68(0.37-1.27)であった。 年間増悪率においても、全サブグループでブレンソカチブ投与群の方が低値を示した。特にBSI軽症群では62%、中等症群で31%、重症群で31%の低下が認められた。前年の増悪回数が2回の群では31%、3回以上の群では33%の低下が見られた。 肺機能(FEV1)の変化に関して、24週時点での最小二乗平均差は、BSI軽症群で95.7±71.3mL、中等症群で35.0±49.6mL、重症群で7.4±28.8mLであった。特に注目すべき点として、BSI軽症群(≤4)では、より重症の群と比較して大きな改善が認められた。
■このサブグループ解析は、ブレンソカチブが気管支拡張症の様々な表現型や内因型において広く有効である可能性を示唆している。第III相ASPEN試験(NCT04594369)では、より大規模な患者集団(1600人以上)を対象に、52週間の長期投与における安全性と有効性が評価されている。この試験により、今回の解析で示唆された知見がさらに検証されるであろう。
■本研究にはいくつかの限界がある。試験期間が6か月と比較的短く、被験者数も256人と限られていた。また、サブグループ因子による層別化が行われていなかったため、サブグループのサイズにばらつきがあり、結果に影響を与えた可能性がある。
by otowelt
| 2025-02-03 00:23
| 呼吸器その他