気管支肺胞洗浄液における細菌multiplex PCRは有用か?

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過ぎたるは猶及ばざるが如し・・・。





  • 概要
■この研究は、肺感染症が疑われる非挿管患者の気管支肺胞洗浄(BAL)において、従来の診断方法と比較した場合のmultiplex PCR検査の診断性能と臨床的影響を評価することを目的とした準実験的観察研究である。


■スイスのバーゼル大学病院で実施され、605例のBAL検体が解析対象となった。対象患者の平均年齢は62±15.5歳で、58%が男性であった。54%が免疫抑制状態にあり、そのうち35%が固形臓器移植患者(主に肺移植)であった。


■従来の培養検査に加えて、2週間オン:1週間オフの事前設定スケジュールでmultiplex PCR検査(Curetis Unyvero P50アッセイ)が実施された。PCRパネルは16種類の細菌と1種類の真菌、さらに23個の薬剤耐性マーカーを検出可能であった。


■結果、PCR検査は従来法と比較して高い病原体検出率を示した。パネル内病原体に関して、PCRは82%(134/163)を検出したのに対し、従来法では56%(91/163)の検出率であった。最も多く検出された病原体は、Haemophilus influenzae(20%)、Streptococcus mitis group(19%)、Staphylococcus aureus(15%)であった。


■免疫能の状態による比較では、免疫正常患者の方が免疫抑制患者よりも細菌検出率が高かった一方で、ウイルス感染は免疫抑制患者で多く見られた(33% vs 22%, p=0.007)。免疫抑制患者では、Rhinovirus/Enterovirus(11%)、Cytomegalovirus(6%)、Human metapneumovirus(4%)が主要な検出ウイルスであった。


■従来の微生物学的検査を基準とした場合、PCR検査の感度は81.3%、特異度は86.9%であった。臨床的な細菌感染診断を基準とした場合は、感度37.5%、特異度80%であった。


■治療への影響として、気管支鏡検査後に42%の患者が抗菌薬治療を受け、平均使用期間は12日であった。しかし、PCR結果の有無による入院期間(中央値8日 vs 8日; p=0.839)、抗菌薬使用期間(中央値11日 vs 14日; p=0.362)、処方抗菌薬数(中央値2剤 vs 2剤; p=0.595)に有意差は認められなかった。


■multiplex PCR検査は従来の診断方法より多くの細菌を検出できたが、特定の抗菌薬適正使用プログラムや検査結果の臨床的意義に関する理解がない状況では、臨床転帰への影響は限定的であることが示された。


■本研究の限界として、単施設での実施であること、入院患者や免疫抑制患者の割合が高いこと、細菌感染診断の確実な基準がないことが挙げられた。また、従来法では、PCRパネルに含まれないBordetella species、Citrobacter koseri、Enterococcus等の7種類の追加病原体が検出された。






by otowelt | 2025-03-01 00:30 | 気管支鏡

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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