COPDに対するトリプル吸入療法 vs デュアル吸入療法 コスト比較

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医療費全体をみると、トリプルにする意義は乏しいのではないかという見解です。





  • 概要
■COPDのほとんどの患者では、維持療法として長時間作用性気管支拡張薬が推奨されている。ただし、第一選択の維持療法として、多くの場合トリプル吸入療法が適用される。第一選択としてのトリプルとデュアルの気管支拡張薬のそれぞれの利点は不明であり、ICS以外の代替療法と比較した有効性とコストの評価が必要である。

■この後ろ向き研究では、アメリカの40歳以上のCOPD患者で維持療法を経験していない場合に、単一吸入器でフルチカゾンフランカルボン酸エステル + ウメクリジニウム + ビランテロール (FF+UMEC+VI) またはチオトロピウム + オロダテロール (TIO+OLO) を開始した場合を比較評価した。患者は傾向スコアマッチされ、最大 12 か月間追跡された。主要評価項目は、最初の COPD 増悪までの時間である。副次的評価項目として、肺炎の初回診断までの時間、肺炎関連の入院、医療資源の利用率 (HCRU)、および費用が含まれた。COPD 増悪および肺炎リスクは、Cox 比例ハザード回帰を使用して評価された。

■FF+UMEC+VI群および TIO+OLO群の適格基準を満たした患者は、それぞれ合計 5,121 名および 3,996 名だった。結果は、2,951 組の一致したペアで評価された。中等度または重度の COPD 増悪リスクは、FF+UMEC+VI グループと TIO+OLO グループ間で有意差がなかった (ハザード比1.13、95% 信頼区間 0.99-1.29、P=0.064)。肺炎のリスク(ハザード比1.04、95%信頼区間0.85-1.27、P=0.723)、肺炎関連の入院(ハザード比1.18、95%信頼区間0.78-1.79; P=0.429)も、グループ間で有意差はなかった。HCRUイベントまたは全原因コストに有意差はなかったが、FF+UMEC+VI 開始者は、TIO+OLO 開始者よりも COPD・肺炎関連の薬局での支払いコストが高くなった(FF+UMEC+VI: $2,934 [$2,827-$3,041]、TIO+OLO: $1,994 [$1,915-$2,073]; P<0.001)。

■維持療法歴がないCOPD患者では、FF+UMEC+VI は TIO+OLO と比較して COPD 増悪リスクを低下させることはなく、COPD・肺炎治療に関連する薬局コストが高くなった。初期維持療法として LAMA+LABA を推奨する治療方針が支持される。





by otowelt | 2025-04-02 00:04 | 気管支喘息・COPD

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


by 倉原優
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