ECRS合併喘息は生物学的製剤が効きやすい
2025年 03月 14日
ECRS合併喘息のほうが通常の喘息よりバイオが効きやすいというのは、多くの呼吸器内科医・耳鼻咽喉科医が実感しているところでしょう。
この研究では、デュピルマブはやや位置づけがECRS臨床とは異なる部分があり、喘息に重きを置いているためと思います。ECRSに有効であることは既存のエビデンスでも示されているため、今後の研究ではECRS合併喘息におけるデュピルマブの第一選択薬としての位置づけを再評価する必要があるでしょう。
- 概要
■本研究は、好酸球性副鼻腔炎(ECRS)が生物学的製剤による治療において、スーパーレスポンダー(SR)および臨床的寛解(CR)の予測因子となる可能性を検討したものである。制御困難なT2-high重症喘息患者111名を対象に、後ろ向き解析を行い、生物学的製剤導入後の喘息制御状態と関連する要因を明らかにすることを目的とした。
■研究対象は、血中好酸球数(BEC)が150 cells/μL以上、呼気中一酸化窒素分画(FeNO)が25 ppb以上であるT2-high重症喘息患者とし、1年以上の生物学的製剤治療を受けた者とした。スーパーレスポンダー(SR)は、OCSを使用せず、かつ喘息の増悪を起こさない状態と定義し、臨床的寛解(CR)はSRの条件に加え、ACTが23点以上であること、あるいは1秒量(%FEV1)が80%以上であることを満たす場合とした。 本研究において使用された生物学的製剤には、オマリズマブ、メポリズマブ、ベンラリズマブ、デュピルマブ、テゼペルマブが含まれた。治療の選択は、患者の併存疾患を考慮して行われた。ECRS、好酸球性中耳炎(EOM)、慢性好酸球性肺炎(CEP)、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)などの好酸球性疾患を有する患者には、メポリズマブまたはベンラリズマブを第一選択とし、無効の場合にはオマリズマブまたはデュピルマブへ切り替えた。一方、好酸球性併存疾患を有さない患者には、オマリズマブを第一選択とし、IgE値が1500 IU/mL以上の患者にはデュピルマブを優先した。いずれの場合も、4か月以上の治療で効果が認められなければ、他の生物学的製剤へ切り替えを行った。
■研究対象111名のうち、85.6%がSRを達成し、50.5%がACTスコア23以上のCRに到達した。さらに、肺機能の改善を伴うCR(%FEV1が80%以上)を達成した患者は27.0%であった。特に、ECRSを有する患者ではCR達成率が有意に高く、ECRSの存在が生物学的製剤の治療効果を高める要因である可能性が示唆された。また、副鼻腔炎の重症度を示すLMS(Lund-Mackay Score)が12以上の患者では、CR達成率が高い傾向を示した。一方で、血中好酸球数(BEC)やFeNO値の違いは、SRおよびCRの達成率に大きな影響を与えなかった。
■本研究の結果から、ECRSが生物学的製剤の治療効果を高める重要な因子であることが明らかとなった。ECRSと喘息は、「one airway, one disease」の概念に基づき、共通の病態機序を持つ。両疾患は、IL-4、IL-5、IL-13といったT2サイトカインによる好酸球の活性化と浸潤が関与しており、生物学的製剤はこれらの経路を抑制することで効果を発揮すると考えられる。過去の研究でも、慢性副鼻腔炎を伴う患者では生物学的製剤の有効性が高いことが示されており、本研究の結果もこれを支持するものとなった。 また、ECRSの治療として内視鏡副鼻腔手術(ESS)が行われることがあるが、本研究ではESSの有無がSRやCRの達成に有意な影響を及ぼさなかった。しかし、ESSがT2炎症を抑制することが報告されており、今後の研究でその影響を詳しく検討する必要がある。 本研究は単施設の後ろ向き研究であり、生物学的製剤の選択に関しては個々の患者の病態による影響がある点が限界である。また、対象患者数が限られており、特にアレルギー性鼻炎を有する患者やESSを受けた患者の割合が少なかったため、今後の多施設共同研究による検証が求められる。
■ECRSの重症度が生物学的製剤による喘息治療の効果を予測する重要な因子であることが示された。制御困難なT2-high重症喘息患者において、ECRSの存在を考慮した治療戦略が求められる。
by otowelt
| 2025-03-14 00:22
| 気管支喘息・COPD