気管支肺胞洗浄液の回収不良と陰圧レベル
2025年 02月 28日
- 概要
■複十字病院において、2024年5月から2025年7月にかけてBALを実施した103名の患者を対象とした臨床試験を実施した。この研究では、気管支閉塞時の陰圧レベルを測定し、BAL回収率との関連を探った。患者はBAL回収率30%未満の「不良群」と30%以上の「成功群」に分類された。
■気管支鏡の先端を気管支内の楔入位置(ウェッジポジション)に配置した後、生理食塩水を注入する前に陰圧測定をおこなった。最初に2 hPaから陰圧を徐々に上げていき、気管支が完全に虚脱した時点での陰圧レベルを記録した。
■103名の患者のうち13名が回収不良群に、90名が回収成功群に分類された。不良群の患者の年齢中央値は74歳(範囲47-86歳)で、男性が7名(53.8%)であり、これは成功群の患者(年齢中央値72歳[範囲18-90歳]、P=0.290;男性56名[62.2%]、P=0.560)と有意差はなかった。不良群の患者は成功群の患者よりも気管支閉塞時の陰圧レベルが有意に低かった(中央値8 hPa[95%信頼区間:3-13]vs 10 hPa[4-22]、P<0.001)。BAL回収率不良を予測するための気管支閉塞時の陰圧レベルのROC曲線下面積は0.807(95%信頼区間0.687-0.927)であった。気管支閉塞を引き起こす予測可能な陰圧レベルとして9.5 hPa未満がカットオフ値と特定され、感度は67.8%、特異度は92.3%であった。
■気管支壁面積と陰圧レベルの間に正の相関が見られた(R=0.256、P=0.010)。これは、気管支壁が弱いほど陰圧による虚脱が起こりやすいことを示唆している。中葉/舌区以外の部位でのBALは不良群では38.5%、成功群では12.2%(P=0.029)と有意に不良群で多く、不良群の気管支壁面積は成功群よりも小さかった(中央値10.4mm²[範囲4.4-12.6]vs 14.2mm²[4.6-17.1]、P=0.001)。
※気管支壁面積:(気管支外径長軸長)×(気管支外径短軸長)×3.14÷4-(気管支内腔の面積)

■BAL回収率と陰圧レベルの間には有意な関係はなかった(R=0.145、P=0.143)。また、中葉/舌区とその他のBAL部位間の陰圧レベルにも有意差はなかった(中央値10 hPa[範囲4-22]vs 9 hPa[範囲3-22]、P=0.122)。

■この研究は、気管支閉塞時の陰圧レベルがBAL回収率不良を予測できることを示した。これは、弱い気管支壁が陰圧下で虚脱しやすい可能性を示唆している。