難治性肺MAC症に対するアミカシンリポソーム吸入懸濁液(アリケイス)の効果とアミカシン耐性率
2025年 03月 03日
- 概要
■国立病院機構近畿中央呼吸器センターで2021年8月~2023年12月の間にALIS治療を開始し、最低6ヶ月間治療を受けた難治性MAC-PD患者44名を対象に後ろ向き分析を実施した。
■対象患者の年齢中央値は72.0歳で、女性が多数(84.1%)を占めていた。非空洞性結節気管支拡張型(NC-NB)が19名(43.2%)、空洞型が25名(56.8%)であった。
■全体の喀痰培養陰性化率は56.8%(25/44)であったが、NC-NB型では84.2%(16/19)、空洞型では36.0%(9/25)と有意な差が見られた(p = 0.001)。さらに、間欠的投与を受けた患者18名のうち9名(50.0%)でも培養陰性化が達成された。培養陰性化の中央時間は147.0日であり、陰性化を達成した25名のうち18名(72.0%)はALIS開始から6ヶ月以内に陰性化した。
※ALIS間欠投与の定義:3ヶ月以上の期間にわたって処方された薬剤の80%以下しか受けていない場合。典型的な35日間の処方サイクルでは、患者は3ヶ月間で3回の処方(合計105バイアル)を受けるはずだが、このうち84バイアル以下(期待される105バイアルの80%以下)しか受けなかった場合、間欠的投与と分類。

■培養持続陽性を予測する因子として、血清CRP≥ 1 mg/dL、空洞型、クラリスロマイシン(CLM)耐性の3つが重要であることが判明した。これら3つの特性をすべて持つ患者は、CRP < 1 mg/dL、NC-NB型、CLM感受性の患者と比較して、培養陽性のリスク比が10.81(95%信頼区間:1.66–70.40)と高かった。
■副作用としては、軽度の発声障害が21名(47.7%)で発生し、その中央発現日は11日であった。この症状により、16名が間欠的投与に移行した。その他に咳や呼吸困難(各11.4%)、口腔咽頭痛(13.6%)、疲労感(9.1%)などが報告されたが、ほとんどの症例で治療は継続可能であった。声障害が治まった後も8名の患者(50.0%)は間欠的投与の継続を希望した。
■アミカシン耐性に関して、培養持続陽性19名のうち7名(36.8%)でアミカシン耐性(MIC ≥ 128 µg/mL)がみられた。ALIS投与全患者44例からみれば、15.9%がこれに相当した。7名のアミカシン耐性例のうち5名(71.4%)でrrs遺伝子変異が確認され、4名がposition 1408の変異、1名がposition 1491の変異であった。rrs変異があるすべての症例で、既存のCLM耐性との交差耐性が確認された。アミカシン耐性発現例の71.4%は空洞型であり、アミカシン感受性例の8.8%と比較して有意に高かった(p = 0.0096)。
■難治性肺MAC症に対するALISを含むレジメンは、空洞型よりもNC-NB型で高い培養陰性化率を達成する。ALIS投与中に発現するアミカシン耐性は、難治性MAC-PDの治療選択肢を制限する可能性があることが示唆される。