アミカシン耐性肺MAC症のリスクは?
2025年 03月 07日
- 概要
■多変量解析の結果、AMK耐性の独立リスク因子として、クラリスロマイシン(CAM)耐性と、アミノグリコシド(AMG)の総使用期間が12か月を超えることが同定された。CAM耐性: 調整オッズ比5.48(95%信頼区間1.56–19.3、P値 < 0.01)、AMG使用期間が12か月を超えること: 調整オッズ比9.03(95%信頼区間2.17–37.5; P < 0.01)。
■特に、CAM耐性はAMK耐性群で有意に多く認められ、これはCAM耐性MAC-PDに有効な薬剤が少なく、手術不能の症例で長期間のAMG使用を余儀なくされる状況があるためと推測される。また、CAM感受性患者であっても、AMGを長期使用することにより、AMK耐性がCAM耐性より先に出現する可能性がある。
■AMK耐性を示すMAC臨床分離株の分子特性について調べた結果、AMK耐性株の57.1%においてrrs遺伝子変異が同定された。A1408G変異は10株(48%)、G1491T変異は1株(5%)、A1408GとC203Tの両方の変異を有する株が1株(5%)、変異が全く認められない株は9株(43%)だった。rrs変異のない株でもAMK投与後にMICの顕著な上昇が認められており、このことは遺伝的変異以外のメカニズム、例えば薬剤の排出ポンプなどによる耐性化の可能性が示唆される。
■AMK耐性確認後の3年間におけるAMK耐性群の喀痰陰性化率は24%と低く、さらに3年間の死亡率は33%と高かった。一方、AMK感受性群の3年死亡率は10%であり、有意に低かった。また、AMK耐性群では、在宅酸素療法の導入頻度も有意に高く、予後不良だった。
■AMK耐性確認後も86%の患者でAMK治療が継続されていたが、これは臨床現場で他に有効な治療薬の選択肢が限られているためと考えられる。
■CAM耐性とAMG使用期間が12か月以上であることがAMK耐性の独立したリスク因子であることが明らかになった。AMK耐性群では3年生存率が著しく低下し、臨床的に深刻な状況を示していた。さらに、rrs遺伝子変異が存在しない場合でもAMK耐性化が起こりうることから、耐性メカニズムについての更なる研究が求められる。