FVC・DLCOのわずかな低下でもIPFの予後予測に有用
2025年 03月 26日
測定誤差もあるので、実臨床では何度かトレンドを見ての判断、ということになりますが。
- 概要
■本研究は、IPF患者における肺機能の低下と死亡リスクとの関連性を調査したものである。IPFは進行性の線維化を伴う間質性肺疾患であり、肺機能の低下と高い死亡率が特徴である。
■IPF患者において、肺活量(FVC)や一酸化炭素肺拡散能(DLCO)の低下は疾患の進行を示す指標として臨床で用いられている。一般的に、FVCが予測値の5%以上または10%以上、DLCOが予測値の15%以上低下することが臨床的に意味のある閾値とされてきた。しかし、これよりも小さい肺機能の低下も死亡リスクの増加と関連している可能性がある。 本研究では、IPF-前向き転帰登録(IPF-PRO Registry)のデータを用いて、FVCおよびDLCO予測値の様々な低下閾値と、その後の死亡または肺移植リスクとの関連を検討した。
■本研究では、2014年6月から2018年10月にかけて、46施設からIPF診断が確定してから6か月以内の患者1,001名を登録した。患者は死亡、肺移植、または登録からの離脱まで前向きに追跡された。 肺機能の変化は、登録時からFVCまたはDLCO予測値が≥2%、≥5%、≥10%(DLCOについては≥15%も含む)低下した時点までの期間と、その後の死亡または肺移植リスクとの関連をCox比例ハザードモデルで評価した。モデルは、登録時のFVC、DLCO予測値、年齢、性別、喫煙状況、BMI、抗線維化薬治療の有無、酸素使用の有無で調整した。
■患者の特性として、年齢中央値は71歳(四分位範囲66-75歳)、74.6%が男性、FVC中央値は予測値の73.4%(四分位範囲62.4-83.2%)、DLCO中央値は予測値の43.3%(IQR35.5-50.3%)であった。54.0%の患者がニンテダニブまたはピルフェニドンによる治療を受けていた。追跡期間の中央値は38.4か月であった。
■調整解析において、FVC予測値の絶対的低下が≥2%、≥5%、≥10%の場合、その後の死亡または肺移植リスクがそれぞれ1.8倍、2.3倍、2.7倍増加することが示された。同様に、DLCO予測値の絶対的低下が≥2%、≥5%、≥10%、≥15%の場合、リスクはそれぞれ2.0倍、1.4倍、1.5倍、1.9倍増加した。 DLCOについては、絶対的低下よりも相対的低下に基づく閾値を満たす患者の方がリスク増加が大きい傾向があったが、FVCについては絶対的低下と相対的低下で同程度のリスク増加が見られた。 また、肺機能の低下を長期間にわたって評価した場合よりも、短期間(例えば6か月)で同じ程度の低下があった場合の方が、死亡または肺移植のリスクがより高いことが示された。これは、肺機能低下の速度も重要な予後因子であることを示唆している。
■本研究の結果から、IPF患者において、臨床的に意味があるとされてきた閾値(FVC≥5%または≥10%、DLCO≥15%)よりも小さい肺機能の低下(≥2%)でも、ベースラインの特性を調整した後も予後予測に有用であることが示された。 興味深いことに、IPFは定義上進行性の疾患であるが、患者の中には肺機能が安定または改善する例も見られた。本研究では、18か月の追跡期間中に22.8%の患者でFVC予測値の増加、8.7%の患者でDLCO予測値の増加が観察された。
■IPF-PROレジストリのデータ分析から、FVCおよびDLCO予測値のわずかな低下(2%程度)でも、IPF患者の予後予測に有用であることが示された。
by otowelt
| 2025-03-26 00:46
| びまん性肺疾患