リファンピシンの使用は肺MAC症の培養陰性化を遅らせる?
2025年 03月 15日
「MAC2v3を待とう」という見解が多いですが、その結果がすべてというわけでもありません。リファンピシンの位置づけについては 100 か 0 の二元論で語れるものではない・・・と思っています。
参考記事:
- 概要
■本研究では、詳細な経時データを用いて、薬剤ごとの使用期間を考慮しながら、治療結果、特に培養陰性化までの期間に対する影響を評価することを目的とした。
■2009年1月から2021年12月までにソウル大学病院で治療を受けた肺MAC症の患者534人を対象とした。すべての患者がマクロライドおよびエタンブトールをベースとした治療を受けていた。追加的にリファンピシン、クロファジミン、アミノグリコシド系抗菌薬が、症状の重症度や病状の進行度に応じて担当医の裁量により投与された。研究に用いた主要なアウトカム指標は培養陰性化までの期間であり、これは4週間以上間隔をあけて連続3回の陰性培養を示した最初の日を基準として算出した。解析には時間依存性を考慮したCox比例ハザードモデルを用いた。
■年齢中央値64歳で、培養陰性化を達成しなかった患者は達成した患者よりも高齢であり、男性の割合が多かった。また、CT画像上の空洞がある患者は培養陰性化を達成しなかった群に多く含まれていた。また、クロファジミンおよびアミノグリコシドの使用率が培養非陰性化群で高かったのに対し、リファンピシンは培養陰性化群で使用率が高かった。
■リファンピシンの使用が培養陰性化を遅らせることと関連していることが明らかとなった。具体的には、リファンピシンを1ヶ月追加投与するごとに培養陰性化のハザード比が0.959(95%信頼区間:0.924–0.995、P=0.027)となり、培養陰性化の速度を有意に低下させることが示された。一方、クロファジミン(調整後ハザード比1.022、P=0.331)やアミノグリコシド系薬剤(調整後ハザード比0.976、P=0.462)については、培養陰性化までの時間に対する有意な関連性は認められなかった。
■リファンピシンは現在肺MAC症治療において標準的に推奨されている3剤併用療法(マクロライド、エタンブトール、リファンピシン)の一角をなしている薬剤であり、リファンピシンはマクロライド耐性の発現を抑制し、患者の生存率改善に寄与すると考えられてきた経緯がある。しかし一方で、MACに対する効果は比較的弱いこと、CYP3A4の誘導を介してマクロライドの血中濃度を低下させる可能性があること、さらには最近の臨床試験や前臨床試験で追加効果が明確に証明されていないことなど、リファンピシンの有効性については議論が続いている。今回の研究はこうした議論に新たな証拠を提供するものであり、リファンピシンを含む治療法の再検討が必要であることを示唆している。
by otowelt
| 2025-03-15 00:17
| 抗酸菌感染症