FIBRO-COVID試験:COVID-19感染後肺線維症に対するピルフェニドン

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COVID-19の後にみられる火傷の痕のようなあの線維化に対して、現時点ではピルフェニドンは有効とまでは言えないようです。





■SARS-CoV2(COVID-19)感染による急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の重症度は入院患者の死亡率や持続性間質性線維化変化の主なリスク因子である。重症COVID-19患者の大部分は臨床的・放射線学的に改善するが、回復は遅れることが多く、25~35%の患者は急性期から6~18ヶ月後も構造的・機能的な呼吸器系の異常が起こるとされている。ピルフェニドンは特発性肺線維症(IPF)に対して承認された抗線維化薬であり、COVID-19後の肺線維化に対する効果が期待された。

■本研究はCOVID-19の重症肺炎から回復後に持続する肺の線維性変化を有する患者に対するピルフェニドンの効果と安全性を評価するための第2相、ランダム化、二重盲検、プラセボ対照、多施設臨床試験である。

■本研究はスペインの10病院で実施され、ピルフェニドンまたはプラセボを2:1の割合で無作為に割り当て、24週間の治療を行った。主要評価項目は改善した患者の割合であり、改善は努力性肺活量(FVC)の絶対値が10%以上増加、および/または高分解能CTでの線維化スコアの減少と定義された。副次評価項目には健康関連QOL質問票(K-BILD)、運動耐容能、薬物安全性プロファイルが含まれた。

■119名の適格患者から113名がランダム化され、最終的に103名が分析対象となった(ピルフェニドン群69名、プラセボ群34名)。対象患者の大部分は男性(73.5%)で、低用量のプレドニゾンを服用しており、平均年齢は63.7歳、BMIは29 kg/m²だった。すべての患者は重症COVID-19によるARDSのために集中治療室や準集中治療室に入院していた。

■主要評価項目である臨床的改善(FVC絶対値10%以上の増加および/または線維化スコアの減少)を達成した患者の割合は、ピルフェニドン群(79.7%)とプラセボ群(82.3%)で有意差はなかった。平均予測FVC(%)の増加はピルフェニドン群で12.74(20.6)、プラセボ群で4.35(22.3)であり(p=0.071)、HRCT線維化スコア(%)の減少はピルフェニドン群で-5.44(3.69)、プラセボ群で-2.57(2.59)であった(p=0.52)。K-BILDの臨床的に意義のある改善はピルフェニドン群で55.2%、プラセボ群で39.4%であったが、統計的有意差はなかった。運動能力、有害事象、入院についても両群間で同様であった。死亡例は報告されなかった。 治療関連有害事象の発生率はピルフェニドン群(25%)とプラセボ群(16%)で統計的有意差はなかった(p=0.3421)。ピルフェニドン群では消化器系および皮膚の有害事象がやや多かったが、大部分は用量減量後に改善した。

■結論として、重症COVID-19肺炎から回復した患者における肺機能およびHRCT線維化スコアの6ヶ月後の全体的な改善は、ピルフェニドン投与群とプラセボ群との間に有意差がなかった。これは、重症COVID-19後の線維化変化を有する多くの患者が抗線維化治療なしでも時間の経過とともに自然に改善することを示唆している。ピルフェニドンによる治療は、低用量経口ステロイドに加えても、COVID-19後の線維性肺障害の回復に有意な追加的効果を示さなかった。






by otowelt | 2025-04-14 00:18 | びまん性肺疾患

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


by 倉原優
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