DEPICT-2試験:COPDに対する早期トリプル吸入療法は1秒量を底上げ

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いわゆる「いきなりトリプル」については、国内外で推奨されているわけではなく、あくまで治療反応性不良や増悪頻度が高い事例に用いるべきというのがコンセンサスです。





  • 概要
■COPDは進行性の肺機能低下を特徴とする疾患であり、特に軽度から中等度のCOPD患者において肺機能低下が急速に進行する傾向がある。DEPICT-2研究は、COPD患者における薬物療法の早期開始とデュアル気管支拡張薬(LAMA/LABA)からトリプル療法(LAMA/LABA/ICS)への早期移行が、長期的な臨床転帰に与える影響を模擬的に評価したモデリング研究である。

■本研究では、肺機能(FEV1)、QOL、死亡率に関する発表済みデータを用いて、縦断的な非パラメトリックスーパーポジションモデルを構築した。モデルは40歳から75歳までの疾患進行を模擬し、45歳での二重気管支拡張薬(LAMA/LABA)開始と50歳でのトリプル療法への段階的移行が、FEV1低下、QOL、死亡率に与える影響を評価した。

■モデルシミュレーションの結果、「LAMA/LABAのみ」の治療戦略では75歳時点で無治療と比較して159.1mLのFEV1が保持される一方、「トリプル療法への移行」戦略では無治療に対して376.5mL、「LAMA/LABAのみ」と比較して217.3mLのFEV1が追加的に保持されると予測された。

■QOLの指標であるSGRQスコアについては、「LAMA/LABAのみ」では無治療と比較して3.2ポイントの改善、「トリプル療法への移行」ではさらに4.4ポイントの追加的改善が見られた。

■死亡率に関しては、「LAMA/LABAのみ」では75歳時点で無治療と比較して5.4%の減少、「トリプル療法への移行」ではさらに6.6%の追加的減少(無治療と比較して合計12.0%の減少)が予測された。

■本研究の意義は、COPD患者における薬物療法の早期開始とトリプル療法への段階的移行が、肺機能保存、QOL改善、生存率向上において長期的な利益をもたらす可能性を示した点にある。COPDの現在の治療ガイドラインでは、通常は二重気管支拡張薬から治療を開始し、増悪の基準を満たした場合にトリプル療法へ移行することが推奨されているが、このモデル研究は早期からの積極的治療アプローチの潜在的利益を示唆している。





by otowelt | 2025-04-20 00:46 | 気管支喘息・COPD

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


by 倉原優
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