喘息のステップダウン:ICSを減量する?モンテルカストをやめる?


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モンテルカストを併用しているという前提ですが、ICSのステップダウン時には残しておいたほうが吉という結果でした。



Rahimi B, et al. Comparison of ICS dose reduction vs. montelukast discontinuation for step-down therapy in well-controlled asthma: a pilot randomized controlled trial. BMC Pulm Med. 2025 Apr 9;25(1):167.

■本研究は、イラン・テヘランのImam Khomeini病院において行われた単施設ランダム化比較試験であり、対象は中等量または高用量のICSとLABA、加えてモンテルカストによる治療を受けている成人喘息患者である。対象患者は過去3ヶ月間にわたって良好なコントロール状態(ACTスコア20以上)にあり、過去1年間に増悪を経験していない者とされた。

■73名が参加し、ICSを半量に減量してモンテルカストを継続する群(Group A)と、ICSを維持しながらモンテルカストを中止する群(Group B)にランダムに割り付けられた。研究期間は3ヶ月であり、主要評価項目はACTスコアによる喘息コントロールであった。副次評価項目には肺機能(FVC、FEV1、FEV1/FVC)、咳症状、治療失敗率、薬剤アドヒアランスが含まれた。なお、治療失敗は、ACTスコアが20未満に低下し、追加のICS/LABA吸入が必要になった場合と定義された。


■ACTスコアの変化については両群間で統計学的有意差は認められなかった。しかしながら、治療失敗率はGroup A(ICS減量群)で有意に低く、3ヶ月時点での治療失敗は0人であったのに対し、Group B(モンテルカスト中止群)では5人(20%)が治療失敗を経験していた。この差は有意であり(p=0.01)、ICSを減量しつつモンテルカストを継続するアプローチの有効性が示唆された。


■肺機能(FEV1、FVC、FEV1/FVC)や咳症状(昼夜別の咳スコア)については、両群とも改善が見られたが、群間差は認められなかった。薬剤アドヒアランスは両群ともに高く、重篤な有害事象は報告されなかった。また、モンテルカストに関連するとされる神経精神系副作用も本試験では観察されなかった。


■本研究の意義は、実臨床においてよく遭遇する「どの薬を減らすべきか」という問いに対して、一定のエビデンスを提供する点にある。現行のGINAガイドラインにおいても、Step 4の治療後におけるICSの減量が推奨されており、本研究の結果はそれを支持するものである。特に、中等症〜重症喘息患者ではICSの副作用(副腎抑制、骨密度低下、成長抑制など)を回避するためにも、できる限り低用量のICSでコントロールを維持することが望ましい。加えて、近年の研究においても、モンテルカストはICSの補助薬として喘息コントロールの向上に寄与することが示されており、ICS単剤よりも良好な肺機能や咳症状の改善が得られることが報告されている。


■本研究の結果は、ICSを減量しつつモンテルカストを継続するという戦略が、特に重症例や頻繁に増悪を繰り返す患者において有用である可能性を示唆する。






by otowelt | 2025-04-25 01:52 | 気管支喘息・COPD

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


by 倉原優
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