肺線維症に対するLPA1拮抗薬アドミルパラント

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新規薬剤の第2相時点からブログ記事に取り上げるべきかいつも迷うのですが、LOFT-IPF(NCT06003426)とALOFT-PPF(NCT06025578)は非常に注目されている臨床試験なので、紹介させていただきます。





■特発性肺線維症(IPF)と進行性肺線維症(PPF)は、不可逆的な肺機能喪失と早期死亡に関連する慢性線維化性間質性肺疾患である。IPFは最も一般的な慢性線維化性間質性肺疾患であり、診断時から進行性の経過をたどる。一方、PPFは非IPF線維性間質性肺疾患患者の一部が示す進行性の表現型で、治療しないIPFと同様の肺機能低下、症状悪化、早期死亡を特徴とする。 現在、ピルフェニドンとニンテダニブという抗線維化治療薬がIPF患者の疾患進行を遅らせることが示されているが、いずれも疾患の進行を完全に止めることはできず、治療継続期間を制限する可能性のある副作用を伴う。ニンテダニブはPPFに対して承認されている唯一の治療薬であり、ピルフェニドンは第2相試験で評価されている。 LPA1受容体は肺線維症の病因と進行に関与する複数の過程に関連している。アドミルパラント(BMS-986278)は経口投与可能な低分子LPA1拮抗薬であり、IPFとPPF治療を目的として第3相開発段階にある。第2相試験(NCT04308681)では、アドミルパラントがIPFコホートで26週間にわたるppFVC(%予測肺活量)の低下率をプラセボと比較して1.4%、PPFコホートでは3.2%減少させ、両コホートで良好な忍容性を示した。

■この事後解析では、IPFコホート255名とPPFコホート114名を対象に、アドミルパラント(30mgまたは60mg、1日2回経口投与)またはプラセボを26週間投与した。

■ベースラインの中央値ppFVCは、IPFコホートで77.3%、PPFコホートで64.7%であった。疾患進行は、ppFVCの相対的10%以上の低下、急性増悪、全原因入院、全原因死亡という複合エンドポイントとして定義された。

■60mgのアドミルパラントによる治療は、プラセボと比較して26週間の疾患進行までの時間を両コホートで遅延させた(IPF:ハザード比0.54 [95%CI 0.31-0.95]、PPF:ハザード比0.41 [95%CI 0.18-0.90])。26週間の治療期間中、60mgアドミルパラント群の疾患進行イベント発生率はIPFコホートで22.6%(プラセボ群39.3%)、PPFコホートで25.6%(プラセボ群43.6%)であった。ベースラインのppFVC中央値を基準とした部分集団解析でも同様の傾向が観察された。IPFコホートでは、中央値未満のppFVC患者におけるプラセボ対60mgアドミルパラントのハザード比は0.46(95%CI 0.21-1.02)、中央値以上ではハザード比0.67(95%CI 0.29-1.57)であった。PPFコホートでは、中央値未満のppFVC患者におけるハザード比は0.23(95%CI 0.08-0.69)、中央値以上ではハザード比0.56(95%CI 0.16-1.98)であった。

■両コホートにおいて、最も頻度の高い最初の進行イベントはppFVCの10%以上の相対的低下であり、60mgアドミルパラント群ではIPFコホートで16.7%(プラセボ群27.0%)、PPFコホートで15.4%(プラセボ群28.2%)であった。死亡は最初の進行イベントとして報告されなかった。

■この事後解析の結果は、IPFおよびPPF患者に対するアドミルパラントの治療選択肢としての更なる評価を支持するものであり、現在進行中の第3相臨床試験(ALOFT-IPF、NCT06003426;ALOFT-PPF、NCT06025578)では、約3年間にわたる疾患進行に対するアドミルパラントの効果が評価される予定である。





by otowelt | 2025-04-12 01:36 | びまん性肺疾患

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


by 倉原優
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