アレルギー性気管支肺真菌症に対する気管支鏡の役割


気管支鏡検査をおこなうことで
・喀痰・気管支洗浄液で糸状菌培養陽性
・粘液栓内の糸状菌染色陽性
・粘液栓喀出の既往あるいは CT・気管支鏡で中枢気管支内粘液栓あり
の項目が見たしやすくなるため、意義はあるという見解は同感です。

ちなみに、日本のABPMの手引きは2025年に改訂されていますが、呼吸器内科医の先生方でも知らない人が多い気がします。ぜひ買いましょう。

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■本研究は、新しい診断基準に基づくアレルギー性気管支肺真菌症(ABPM)の診断および治療における気管支鏡下の粘液栓除去の役割を検証するために実施された後ろ向き研究である。対象は2020年10月から2024年3月までに国立病院機構岡山医療センターにおいてABPMと診断され、気管支鏡検査を受けた10例である。Asanoらによる新基準は従来よりも感度・特異度が高く、臨床現場での実用性が高いとされており、粘液栓の存在がCTで確認された場合、診断確定のために気管支鏡検査を行うことが推奨されている。

■対象患者は中央値67歳で、女性が多く、80%に喘息の既往があった。血中好酸球数の中央値は1370/μL、総IgE値の中央値は3065.5 IU/mLであった。ABPMの原因真菌としては、Aspergillus属が7例、Schizophyllum communeが3例であった。これらの真菌に対する特異的IgEは千葉大学真菌医学研究センターで測定された。


■気管支鏡手技はすべての症例において粘液栓の吸引除去を基本とし、吸引で困難な場合には鉗子、ブラシ、生理食塩水による洗浄、さらにクライオプローブによる凍結採取などが用いられた。クライオプローブは粘性やサイズの大きい栓を効率的に採取するために有効とされた。


■診断基準への該当数は、気管支鏡前には10例中5例であったが、気管支鏡所見を加味するとすべての症例が基準を満たすことが確認された。粘液栓の中から真菌が培養されたのは4例、細胞診で真菌が同定されたのは6例であった。またCharcot–Leyden結晶は全例で認められた。診断基準の該当項目数は、気管支鏡前中央値5.5に対し、検査後は6.5に増加し、統計的に有意差が認められた(p=0.006)。


■治療的効果としては、気管支鏡による粘液栓除去後に臨床的改善がみられた症例が4例あり、そのうち2例では除去のみでステロイドや抗真菌薬を用いずに改善が得られた。特に1例では、好酸球数が2000/μLから130/μLに著明に低下し、画像所見も著明な改善を示した。しかしながら、粘液栓からの真菌培養は成功率が低く、死菌の存在や検体処理の遅延、培養条件の不適合、常在菌による競合などが原因と考えられた。これを補完するために、Grocott染色などの細胞診的評価が重要であり、今後は分子診断法(PCR等)との併用が望まれると考察された。また、ABPMは肺癌と類似の臨床像を示すことがあり、CEA高値や無気肺像を呈することで鑑別を要する。今回の症例でも8例中6例でCEA測定がなされ、うち4例が基準値を超えていた。


■結論として、Asano基準を用いたABPMの診断には粘液栓の気管支鏡的評価が重要である。画像上で粘液栓が認められる場合には、診断確定とともに治療的介入としても、気管支鏡による除去を行うべきである。


■本研究には後ろ向き単施設研究であり、症例数が少ないという限界がある。今後は多施設での前向き研究によって外的妥当性の向上が望まれる。






by otowelt | 2025-05-01 02:47 | 呼吸器その他

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


by 倉原優
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