感染症専門医からみたCOVID-19後遺症の実態
2025年 05月 12日
- 概要
■この調査では、PCCを「初期の急性期から少なくとも4週間以上症状が持続する状態」と定義しており、症状の持続期間(4週間以上、12週間以上、1年以上)に応じた分析が行われた。調査対象者の約70.3%は病院勤務であり、主な診療科は内科系(内科、感染症科、呼吸器内科、小児科、総合診療科)であった。回答者の68.4%がCOVID-19症の入院治療に、90.1%が外来治療に携わっていた。
■病院勤務の回答者324名のうち、69.7%がPCC患者の治療経験を有していたが、専門外来を設置していたのは11.2%に留まった。PCC患者の性別について明確な偏りはなく、年齢層は18~64歳が最も多かった。施設あたりの治療患者数は、1~9人が48.9%、10~99人が44.8%、100人以上が6.2%であった。
■症状の持続期間については、3ヶ月以上続く患者がいると回答した施設が81.0%、12ヶ月以上が65.0%であった。最も長い症状持続期間は、6ヶ月未満が46.2%、6ヶ月~1年が22.0%、1~2年が19.8%、2~3年が8.2%、3年以上が8.8%であった。
■PCCの症状としては疲労感が最も多く(89.3%)、次いで呼吸器症状(咳、息切れ、痰)や味覚・嗅覚障害が続いた。症状持続期間が長くなるにつれて、うつ状態や物忘れといった神経精神症状の割合が増加する傾向が見られた。
■PCC患者の仕事や学校の休暇取得率については、9%未満と回答した施設が50.6%を占めた一方、10~29%が10.4%、30%以上が6.0%であった。
■治療アプローチとしては、西洋医学(56.0%)、漢方薬(65.8%)、サプリメントやビタミン(11.6%)、リハビリテーション(8.8%)、咽頭擦過療法(4.7%)、カウンセリング(22.6%)などが用いられていた。効果があったとされる治療法は、西洋医学(31.8%)、漢方薬(41.8%)、カウンセリング(15.4%)などであった。
■回答者の31.1%が患者を他の専門医へ紹介した経験があり、紹介先としては神経内科(34.3%)、精神科(29.3%)、耳鼻咽喉科(25.3%)、総合内科(24.2%)、呼吸器内科(19.2%)が多かった。
■また、医療機関のスタッフにPCCが発生したと報告した施設は27.4%に上り、最も重症なスタッフの休職状況は、「影響なし」が36.8%、「1週間未満の休職」が12.8%、「1週間~1ヶ月の休職」が26.4%、「1ヶ月以上の休職」が24.0%であった。つまり、約3分の2のスタッフが何らかの休職を必要としていた。
■この調査結果から、日本の多くの医療機関でPCC患者への対応が行われているが、専門外来の設置は限られていることが明らかになった。また、長期的な患者フォローアップと支援体制の整備、特にPCCに罹患した医療従事者のための職場復帰支援システムの開発が必要であることが示唆された。