市中肺炎に対する全身性ステロイドはどれがベスト?


市中肺炎に対する全身性ステロイドはどれがベスト?_e0156318_22532956.png
全体として、副腎皮質ステロイド群は合計1049名(ヒドロコルチゾン554名、メチルプレドニゾロン370名、デキサメタゾン77名、プレドニゾロン48名)、プラセボ群は993名で、総計2042名の患者が研究に含まれていました。





  • 概要
■重症市中肺炎(severe community-acquired pneumonia, 以下重症CAP)は、急性呼吸不全や敗血症、多臓器不全を引き起こし得る致死的疾患である。

■これに対する補助療法としてのステロイドの使用は、抗炎症作用により病態の進展を抑制する可能性があるとされてきたが、その有効性や安全性に関してはこれまで一定の見解が得られていなかった。本研究は、PubMed、Embase、Cochrane Library、Web of Scienceの4つのデータベースを2024年3月31日までに網羅的に検索し、重症CAPを対象にステロイド療法の有効性と安全性を評価したランダム化比較試験11件(総被験者数2042名)を対象としている。

■対象となったステロイドはヒドロコルチゾン、デキサメタゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロンの4種類であり、いずれもプラセボ対照試験であった。主要評価項目は全死亡率、副次評価項目は人工呼吸器使用率、安全性評価項目は重篤な有害事象(serious adverse events, SAEs)である。

■ヒドロコルチゾンは全死亡率の有意な低下と人工呼吸器使用率の低下に寄与しており、他のステロイドよりも有効であった。全死亡率に関してヒドロコルチゾンはプラセボと比較して相対リスク0.35(95%信用区間:0.14–0.64)と有意な改善効果であった。SUCRA(surface under the cumulative ranking curve)による薬剤のランク付けにおいても、ヒドロコルチゾンは死亡率改善に対し88.7%、人工呼吸器装着の回避で91.9%、SAEsに対しては96.1%という高い値を示し、いずれの観点からも最も優れた治療選択肢と評価された。

■メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン、プレドニゾロンにおいてはプラセボとの間に統計学的有意差はみられず、これらの薬剤が死亡率や人工呼吸器装着率において優れているとは結論づけられなかった。

■サブグループ解析においても、低〜中等量の短期間投与が最も効果的であるという結果が得られた。具体的には、低〜中等量のステロイドは全死亡率を有意に低下させ(RR 0.50, 95% CrI 0.23–0.85)、また人工呼吸器使用率を低下させた(RR 0.50, 95% CrI 0.29–0.78)。短期投与群では全死亡率のRRが0.40(95% CI 0.20–0.72)、人工呼吸器使用率のRRが0.44(95% CrI 0.26–0.77)であり、いずれも統計学的に有意であった。

■安全性に関しても、ヒドロコルチゾンはSAEsの発生率を有意に抑制する結果が示された(RR 0.51, 95% CrI 0.18–0.95)。これは、過剰な免疫抑制による二次感染や代謝障害などのリスクを軽減しつつ、炎症制御を行うというバランスの取れた作用機序によるものと考えられる。

■考察:ヒドロコルチゾンの有効性の背景には、その薬理学的特性が関与している。ヒドロコルチゾンはグルココルチコイド活性に加えてミネラルコルチコイド活性を有し、副腎皮質機能不全や血行動態の維持にも寄与する。さらに、NF-κB経路の抑制により炎症性サイトカインの放出を制御し、過剰な免疫反応を抑制することが示されている。加えて、短半減期であるため病態に応じた用量調整が容易であり、重症患者においても使用しやすい利点がある。含まれたRCT数の制限から感度分析を十分に行うことができず、治療期間や用量について最適解を導出するには至らなかった 。

■本研究はヒドロコルチゾンが重症CAPにおける死亡率および人工呼吸器使用率の低下に寄与し、かつ安全性にも優れる可能性を示している。





by otowelt | 2025-05-17 00:39 | 感染症全般

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


by 倉原優
カレンダー