TARGET試験:ロボット気管支鏡Monarchの多施設共同前向き研究
2025年 05月 05日
海外ではロボット気管支鏡が普及しつつあります。IonとMonarchが主流ですが、まさかCHESTにMonarchの前向き研究がパブリッシュされるとは驚きました。国内で先進的手技の導入が海外に遅れてしまう要因の1つとして、薬事承認までの手続きが非常に長いことが挙げられます。
■参考記事:世界最先端「ロボット気管支鏡」 日本で普及するか!?(URL:https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/blog/kurahara/202405/584017.html)
- 概要
■目的は、ロボット気管支鏡(RAB)の安全性、ナビゲーション成功率、診断能を、実臨床に即した多様な症例群において評価することである。本試験では、21施設にて715例がスクリーニングされ、679例がRABを受けた。
■使用されたロボット支援気管支鏡システムは、MONARCH™ Platform(ジョンソン・エンド・ジョンソン メドテック、ニュージャージー州)である。このシステムは3D再構築された肺構造と連動したナビゲーションを可能とし、操作用のジョイスティック型リモートデバイスにより内視鏡を遠隔操作できる構造である。従来のフレキシブル気管支鏡と同等の直径ながら、末梢肺領域への到達性が大きく向上していることが試験で示されており、本試験では実臨床においてその有用性が検証された。
■主要評価項目は、以下の装置または手技関連の有害事象の発生率であった:(1) 介入を要する気胸、(2) 介入を要する出血、(3) 呼吸不全。副次評価項目には、主要評価項目の個々の構成要素、手技時間、気胸、ラジアルプローブ超音波気管支鏡(R-EBUS)による確認、代替生検手技への転換、合併症、診断率が含まれた。
■本試験では、診断プロセス全体がRABにより遂行されている。すなわち、ナビゲーション、病変到達、標的部位の確認(R-EBUSによる)から、生検器具(針、鉗子、ブラシ)を通じた標本採取まで、すべてロボット気管支鏡下で行われた。EBUSによるリンパ節ステージングを伴う症例も約59%存在し、その場合は多くがRABの後に施行されている。
■平均年齢は68.7歳であり、病変の平均サイズは20.9mm、86.6%が実質性病変であった。病変の87.5%が肺野の外側2/3に位置し、胸膜面からの中央値距離は5mmであり、約37%は胸膜接触病変であった。
■病変到達率は98.7%、R-EBUSによる病変同定成功率は91.7%であった。最終的に、675例(99.4%)においてRAB経由での標本採取が達成され、RABの途中で非ロボット式手技へコンバートされたのは14例(2.1%)のみであった。これは、RABによる一貫したプロセス管理が大部分の症例で可能であったことを示している 。
■診断能については、ATS/ACCP基準による解析では61.6%であった。一方、臨床医による判断では83.2%であった。悪性疾患に対する感度は78.8%とされており、特に病変サイズが20mmを超える場合(診断精度68.8%)、気管支と交通がある場合(66.7%)、COPDの既往がある場合に診断能が高い傾向があった。
■安全性については、679例中26例(3.8%)に手技関連有害事象が認められた。内訳は、ドレナージを要する気胸が19例(2.8%)、止血介入を要する出血が7例(1.0%)、呼吸不全は0例であった。CTガイド下経皮肺生検における気胸率(15〜30%、胸腔ドレナージ6%)と比較しても、RABの安全性は高い水準にあるといえる。
■本研究の特徴は、ロボット支援下での気管支鏡検査を、標的病変へのナビゲーションから組織採取まで一貫して行い、かつその手技成功率と診断精度を多施設・多様な症例群において実証した点にある。ただ、本研究は単群観察研究であるため、他の診断法(例えばCTガイド下経皮生検や他のナビゲーション支援気管支鏡)との直接比較はできず、また経験値の異なる施設間での症例割り当ての不均衡もあり得る点には留意が必要である。
■総じて、本研究はMONARCH™ロボット支援気管支鏡を用いた一連の診断プロセスが、末梢肺病変の安全かつ効果的な生検手段となり得ることを、実臨床に即した大規模データで裏付けた重要なエビデンスである。今後は、他手法との無作為比較やコスト評価も含めたさらなる検討が期待される。
by otowelt
| 2025-05-05 00:40
| 気管支鏡