LAMAは認知症のリスクか?

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LAMAの認知症に対する影響は有意でない、とする結論です。






  • 概要
■この研究は、高齢の慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者において、LAMAの一つであるチオトロピウムの使用が認知症リスクに与える影響を検討したものである。これまで、チオトロピウムを含む吸入抗コリン薬は肺機能改善や増悪予防などの有効性が確立されている一方で、中枢性抗コリン作用による認知機能への影響については臨床的な証拠が乏しく、特に長期的なリスク評価が求められていた。

■本研究はカナダ・オンタリオ州の行政データベースを活用し、対象試験エミュレーションの手法を用いた大規模な新規使用者コホート研究である。 対象は2004年9月4日から2012年2月29日までの間にチオトロピウム単独療法あるいはICS/LABAを新たに開始した66歳以上のCOPD患者であり、ベースライン時点で認知症の既往がない者とされた。最長10年間の追跡期間が設定され、主要解析では治療開始からのITTが用いられた。アウトカムである新規発症の認知症は、過去に検証されたアルゴリズムを用いて同定され、因果関係の逆転などを考慮して1年間のラグタイムが設けられた。

■結果として、チオトロピウム開始群は30,960名、ICS/LABA群は19,530名であり、平均年齢は75.1歳(標準偏差6.7)、女性は46.7%を占めた。追跡期間の中央値は7.59年であり、チオトロピウム群における認知症の発症率は1,000人年あたり29.6(95%信頼区間[CI]: 28.8–30.4)、ICS/LABA群は27.4(95% CI: 26.4–28.3)であった。絶対発症率の差(IRD)は2.3(95% CI: 1.0–3.5)であり、ハザード比(HR)は1.09(95% CI: 1.04–1.14)と、統計学的には有意なリスク上昇が認められた。

■一方で、治療継続状況を考慮したセカンダリ解析(as-treated解析)では、チオトロピウム群の認知症発症率は1,000人年あたり24.1(95% CI: 22.2–26.0)、ICS/LABA群は21.4(95% CI: 18.5–24.3)であり、IRDは2.7(95% CI: −0.8~6.1)、HRは1.11(95% CI: 0.93–1.32)と統計学的有意差はなかった。






by otowelt | 2025-05-24 00:46 | 気管支喘息・COPD

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


by 倉原優
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