気管支鏡手技前のチャネル洗浄は感染を低減
2025年 06月 06日
- 概要
■近年、呼吸器疾患の診断精度向上を目的として、気管支鏡検査における生検や洗浄液の採取が日常的に行われている。しかし、こうした手技に伴う合併症として後気管支鏡検査性肺炎(post-bronchoscopy pneumonia:PBP)が一定の頻度で発生しており、特に肺腫瘍を有する患者においては膿瘍形成などを引き起こし、抗菌薬治療の長期化やがん治療の遅延といった深刻な影響を及ぼす。これまでに予防的抗菌薬の使用が検討されてきたが、一般的な集団において有効性を示すことはできておらず、抗菌薬の適正使用の観点からも非抗菌薬的介入法の開発が望まれていた。
■本研究は、気管支鏡の作業チャネル内に付着した口腔咽頭由来の細菌が検査時に下気道に持ち込まれ、PBPの原因となる可能性があるとの仮説に基づき、診断手技の直前に100 mLの無菌生理食塩水を用いた作業チャネルの洗浄(灌流)を行うことで、チャネル内の細菌量を減少させ、PBPの発生率を低下させられるかを検証したものである。
■本研究は、横浜市立大学附属市民総合医療センターにおける前向き介入試験と過去データの後ろ向き比較解析というデザインで実施された。2023年6月から2024年3月に気管支鏡検査を受けた109名を灌流群とし、2022年6月から2023年3月に同施設で検査を受けた133名を対照群とした。いずれの群においても、検査直後の抗菌薬投与症例や感染症診断目的で検査を受けた症例は除外された。
■灌流の効果を検証するため、14名の被験者において4つのタイムポイント(検査前、挿管後、灌流後、観察後)における作業チャネルからの灌流液を採取し、血液寒天およびチョコレート寒天培地に培養した。
■結果、灌流直後において明らかな細菌コロニー数の減少が確認され、p値はそれぞれ0.0081(血液寒天)、0.0114(チョコレート寒天)、および全体で0.0071と統計学的に有意であった。 臨床的評価として、PBPの定義を14日以内に発熱・炎症反応の上昇および新たな画像所見を伴う肺炎とし、PBP発生率を灌流群と対照群で比較した。灌流群では2.8%(3例)、対照群では3.8%(5例)であり、灌流群において26%の相対的減少が認められたが、統計学的有意差には至らなかった(p=0.733)。一方で、検査後24時間以内の発熱(37.5℃以上)の発生率は灌流群で5.5%、対照群で14.3%と有意に低下しており(p=0.0328)、PBPの軽症形態であるpost-bronchoscopy fever(PBF)の予防効果が示唆された。
■検査後に予防的に抗菌薬を投与された割合は灌流群で8.3%、対照群で17.3%と灌流群において少なかった(p=0.0553)。
■灌流操作が細菌量を減少させることで発熱や感染症の発生を抑制し、その結果として抗菌薬使用の抑制につながる可能性を示唆する。 議論においては、灌流操作の手技的負担の少なさ、特別な器具や時間を要しない利点が強調された。洗浄に要する時間は数十秒程度であり、追加コストも最小限で済む。
■本研究は100 mLの無菌生理食塩水による作業チャネル洗浄が、細菌量の有意な減少をもたらし、PBFの発生率を有意に低下させることを示した。一方で、PBPの発生率の低下は統計的には有意でなかったが、その抑制傾向は示された。今後、本手技の有効性を明確に示すためには、より多くの症例を集積し、多施設共同研究としての検証が求められる。
by otowelt
| 2025-06-06 03:51
| 気管支鏡










