PRISMA研究:タイプ2バイオマーカーごとの喘息増悪に対するOCSの効果

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個人的には、喘息増悪の効果判定として1秒量の評価はそもそもハードルが高いんじゃないかと思っています。MCIDは100mLのよう。





  • 概要
■PRISMA研究は、喘息増悪に対するOCSの効果がタイプ2炎症マーカーによって予測できるかを検証した前向き観察研究である。

■研究デザインは、12歳以上の喘息患者53名を対象とし、血中好酸球数(BEC)と呼気一酸化窒素濃度(FeNO)に基づいて3群に分類した。T2-Low/Low群(BEC <0.15×10⁹ cells·L⁻¹かつFeNO <25 ppb)16名、T2-Mid群27名、T2-High/High群(BEC ≥0.30×10⁹ cells·L⁻¹かつFeNO ≥35 ppb)10名で構成された。全患者にプレドニゾロン40mg 7日間を投与し、治療前後で肺機能と症状を評価した。

■主要結果として、気管支拡張後FEV₁の改善効果は群間差を示した。T2-Low/Low群では0.017±0.153L、T2-Mid群では0.071±0.180L、T2-High/High群では0.390±0.512Lと、バイオマーカーレベルに応じて段階的に改善効果が増大した(p < 0.0001)。T2-Low/Low群の改善は統計学的にも臨床的にも有意ではなかった。MCID(0.1L以上)を達成した患者の割合も、T2-Low/Low群18%、T2-Mid群33%、T2-High/High群60%と有意な傾向を示した。症状コントロール(ACQ-5)の改善も同様の傾向を認めたが、統計学的有意性には達しなかった。

■多変量解析では、症状スコア、胸部X線所見、感染の有無、初回肺機能データなどの従来の臨床指標を調整後も、BEC-FeNOの段階的分類のみが独立した予測因子として残った。このことは、客観的な炎症バイオマーカーが症状や肺機能よりも治療反応を的確に予測することを示している。

■副作用の発現率は全群で同等であり、62%の患者で何らかの副作用がみられた。

■ 研究の限界として、観察研究であること、サンプルサイズが小さいこと、特にT2-High/High群が10名のみであることが挙げられる。ただし、30%を占めるT2-Low/Low増悪では客観的改善が期待できないにもかかわらず、副作用リスクは変わらないという知見は重要である。

■客観的改善はT2-High増悪に限定される。より高いタイプ2炎症負荷が明確な臨床的・治療的軌跡を特定する一方で、OCS関連副作用は均等に分布している。この知見は、喘息増悪治療における個別化アプローチの必要性を強く示唆している。





by otowelt | 2025-06-11 00:03 | 気管支喘息・COPD

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


by 倉原優
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