気管支バルブにおける気胸のリスク

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現在、Zephyr®気管支バルブシステム(Pulmonx Japan社)を用いた気管支鏡下肺容量減量術が、多くの病院の呼吸器内科でおこなわれています。当院でも症例が蓄積されております。気管支バルブの適応の有無だけでなく、COPDを疑った段階で、いつでもご紹介ください。



Jørgensen KH, et al. Risk Factors for Pneumothorax After Treatment With Endobronchial Valves: A Cohort Study. Respirology. 2025 May 29. doi:10.1111/resp.70069.

■COPDに対する気管支バルブ(EBV)治療は、外科的肺容量減少術に代わる低侵襲な選択肢として普及が進んでいるが、その主要な合併症として気胸が知られている。

■デンマークからの全国コホート研究は、気管支バルブ治療後の気胸リスク因子を明らかにすることを目的として実施された。

■本研究は2017年から2023年にかけて、デンマーク国内すべての気管支バルブ施行施設で治療を受けたCOPD患者を対象に実施された後ろ向きコホート研究であり、最終的に228例が解析対象となった。

■このうち46例(20.2%)に気胸が発生していた。気胸発症までの中央値は7時間(四分位範囲2〜22時間)であり、ドレーン治療の期間は中央値13日(同8.5〜22日)と長期にわたった。 ■ 気胸の発症リスク因子としては、気管支バルブの留置部位が上葉であることが最大の危険因子であり、下葉に比して気胸のリスクが有意に高かった(調整リスク比6.32、95%信頼区間2.56–15.60)。さらに、標的葉の容積が大きいほど(100 mL増加あたりの調整オッズ比1.12、95%CI: 1.02–1.22)、また残気量が高いほど(10%ポイント増加あたりの調整オッズ比1.11、95%CI: 1.01–1.23)、気胸のリスクが高くなることが示された。

■治療後2時間以内に無気肺を生じた症例は、気胸を発症した群で多くみられ、術後早期の換気力学的変化が気胸の発症と関係している可能性がある。また、気胸を発症した患者は、肺炎(リスク比4.5、95%CI: 1.7–11.8)、膿胸(p = 0.0047)、集中治療室(ICU)への入室(リスク比9.89、95%CI: 1.98–49.4)といった重篤な合併症の発症率が有意に高かった。

■これらの結果から、気管支バルブ治療においては、術前の肺機能検査やCTによる詳細な解析を通じて、気胸リスクの高い症例を慎重に選定することの重要性が再確認された。とくに上葉ターゲット例や、高い残気量・大きな標的葉容積を有する症例では、予防的介入や術後の緊密なモニタリング体制が求められる。





by otowelt | 2025-06-23 00:13 | 気管支鏡

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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